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漆拾陸 “×××××、×××____ (1)” ページ35

私は花束と手作りの焼き菓子や新鮮な果物等が入った籠を手に或る場所へと向かっていた。



そこは横浜の街から少し離れた所にあり、私が手入れする以前は、人間の背の高さ程まである雑草が好き勝手に生え散らかっていて、誰からも手入れされていない、正に自然そのものの様な場所だった。



今は空いている時間があれば少しの間だけでも来る様にし、その時に手入れを欠かさずしているお陰か、漸く本来あるべき姿らしくなっている。
……まぁ、最近は忙しかったので約一ヶ月ぶりなんだが。





段々とその場所に近づくに連れて磯の香りを含んだ潮風が、サァーっと駆け抜けて行く。
後少し、生い茂る木々を抜けると目的の場所へと辿り着いた。









いつもの様に手馴れてしまった作業を終え、夫々に手を合わせた後、最後のソレの前に他のモノとは違う花束と唯一の手作りの焼き菓子を置き、ソレと背中合わせになる様に裏側に座り込んだ。




『最近は中々来れなくて済みませんでした。お詫びの印に貴方が大好きだと云ってくれた、焼き菓子を持ってきましたよ』




目を閉じ、今はもう感じる事が出来ない温もりを求めるかのようにソレに軽く凭れ掛かった。
ほんの少し温かく感じるのは、一番陽当たりが善い場所に建ててあるからなのかも知れない。




『今日でもう三年ですね……時が経つのは本当に早い』




返事が返って来ない事は重々承知しているが、どうしても話し掛けるのは止められなかった。
それは胸の奥底に何重もの蓋をした感情を誤魔化す為だった。




『あの二人もすくすく成長し、太宰さんなんて私よりも大きくなってしまいました』




未だ幼かった頃の彼等が、何方が先に私の身長を追い越すかと云う可愛いらしい口争いをしていたのを思い出し、くすりと笑う。




『首領も相変わらずの幼女趣味を除けば、仕事に追われる忙しい日々を過ごしていますよ。この前は体調を崩されていたので無理矢理休ませましたが』




森さんは皆に上手く隠しているつもりでも太宰さんなら判ってしまうんですよ。
こっそりと彼が私に教える理由は、森さんの事を思ってなのでしょうね。


それに普段の任務とかの探り合いの時とは違い、あの人自身の体調や気持ちの変化は案外判り易いもので、この私でも気付くのだから、もっと付き合いの長い者なら一瞬で見抜けると思う。




『何時死ぬか判らない此方側の世界なので不安な気持ちは募るばかりですが、それなりに私達は元気にやっていますよ』

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黒龍(プロフ) - Mさん» 嬉しいお言葉、有難う御座います^^ (2019年11月23日 17時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
M - とてもおもしろかったです。 (2019年11月23日 1時) (レス) id: 5a0fa58d7d (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - りーこさん» 有難う御座います!頑張って続き書いていきますね (2019年6月24日 12時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
りーこ - 続きが楽しみです (2019年6月24日 6時) (レス) id: 140e75a81a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒龍 | 作成日時:2019年6月21日 21時

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