二度目の人生はあの子が愛した世界で “弐”【文豪ストレイドッグス】 (ページ34)

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漆拾伍 “〃 (7)” ページ34

｢Aさんに織田作さん、首領から花火を貰ったので良ければやりませんか？｣

大型商店等で売られている極一般的な花火セットの袋片手に安吾さんが尋ねた。
私も作之助さんも断る理由が無いので二つ返事で了承し、急いで残りの咖喱を頬張る。

手際善く花火の用意を終わらせ夫々が気になった花火を手に取り、それの先端を蝋燭の火でつけると赤、青、緑、黄……といった色とりどりの火花が暗闇を照らした。

ちらりと横を見ればいつの間にか太宰さんと仁も加わっていて、太宰さんに至っては花火を振り回している。何だか幼子を見ているようで少々危なっかしい。

｢見て御覧よ！なかなか綺麗じゃあないか。尤も、この花火もあと数秒で終わってしまうのだけれど。其れが善いのだろうねぇ｣

『えぇ。儚いからこそ一層美しく感じるのでしょうね』

それ程離れているわけでは無いが周囲を見れば皆、花火を楽しんでいるようだ。
中也さんも太宰さんと同じく花火を振り回している。
彼等は私が思っている以上に似た者同士なのかも知れない……あ、紅葉さん(金色夜叉発動中)に怒られた。

｢ねぇ織田作、安吾、A、仁。こうして花火を振ると、空中に光の文字や絵が見えるようになるそうだよ。何て書いたか判るかい？｣

確かに太宰さんの振っている花火から光が尾を引いて線を書いている。
然し何を書いていたのかは判らなかった。
他の三人も私同様判らないのか首を傾げた。

それを見た太宰さんは、もう消えてしまった花火を水が入ったバケツにポイッと投げ入れ、楽しそうに年相応の笑顔で微笑んだ。

｢うふふ、答えは秘密だ｣

てっきり教えて貰えるものだと思っていた私達は不満げに彼を見た。
そんな私達を見て彼は、うふふふと笑っている。

｢秘密なのか｣

｢モヤモヤするのは嫌なので教えて下さい｣

｢ふふっ、嫌だね〜。教えてあげなーい！｣

逃げる太宰さんを安吾さんが追いかけ、つられて仁と作之助さんが後を追いかけて、やいのやいのと四人は戯れていた。
悪ノリみたいな感じだが自分も口角が上がっているのでこの状況が楽しいのだろう。

三人に捕まり頭をわしゃわしゃと大型犬にする様に撫でられてた太宰さんは、不意に寂しげな表情を浮かべて星空を見る。

その横顔から何を考えているか私には……私達には判らない。
彼はスっと目を細め、また笑った。

｢また来よう。皆で、此処に｣

＿＿その言葉に誰も返事はしなかった。