伍拾伍 “〃 (2)” ページ13
「のんびり屋の割に図太い泥棒さんだ。盗難事件のあった現場に、現場検証の人間がいては駄目かい?」
警察の人間か……
対して此方は非合法組織に属している下級構成員。之はバレると色々拙いだろうな。
「俺はある組織の下っ端だ。ここで起きた宝石強盗について調べに来た。何か知らないか?」
「仕事は終わった。好きに調べればいい。こちらも人手不足なので、死体はそのままだがね」
「死体……?」
『何故死体が……』
「ああ……見ても吐くなよ」
それ程惨状な状況にも関わらず澄まし顔のまま青年は私達が奥へ行ける様に廊下の出入口の所から退いた。
先に作之助さん、続いて私が廊下に行くとそこには──────。
『っ、これは……』
「何だこれは?どうやればこんな殺しが出来る?」
壁際で死んでいるのは、界隈では有名な殺し屋
廊下でちぎれているのは、大戦で活躍したという熟練の傭兵。そして天井に引っかかっているのは、GSSの武闘派幹部だ。
他にも知った顔がいくつも……全員、強力な戦闘系異能の持ち主だ。
おそらく彼等は宝石を守る番人だろう。
そして強盗に殺された。
「だが一体誰が、これほど強力な異能者達を……」
「そんなに驚くほどのことでもなかろう」
しゃがんで店内側に一番近くにある死体を調べていると青年が私の横に立ち、不思議そうな顔をし乍ら腕を組んでいた。
『何故ですか?』
「今は大規模抗争の真っ最中。今この瞬間にも、外では人がばたばたと死んでいる。異能者の死体なんて異能者そのものよりありふれていると思うが」
「あんた、ヨコハマは初めてか?」
「ああ。何故?」
作之助さんの問いに青年は首を傾げた。
「この街を知っていれば、この殺しが“ありえない”と判るからだ。彼等GSSは、今回の抗争には絶対不干渉を貫いている。彼等の金庫を襲う奴は、眠れる獅子の口に頭を突っ込む間抜けだ」
「では、これは間抜けの犯行ということだね……ふふ、面白い。君もそう思うか?」
『……ええ、まあ』
何故私に振ったのか判らないが、あまりにもじっと目を見てくるので少し視線を逸らした。
あの赤い瞳を何処かで私は見た事がある気がするのだがいまいち思い出せない。
「そうか……これは“奴”が殺したのか」
作之助さんが右手の人差し指を口唇に当て納得した様に呟いた。
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黒龍(プロフ) - Mさん» 嬉しいお言葉、有難う御座います^^ (2019年11月23日 17時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
M - とてもおもしろかったです。 (2019年11月23日 1時) (レス) id: 5a0fa58d7d (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - りーこさん» 有難う御座います!頑張って続き書いていきますね (2019年6月24日 12時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
りーこ - 続きが楽しみです (2019年6月24日 6時) (レス) id: 140e75a81a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒龍 | 作成日時:2019年6月21日 21時