肆拾肆 “〃 (2)” ページ2
それでも二人は気付かずに再び追いかけっこを始めた。傍から見れば可也危ない光景だと思う。小さく溜息を吐いて私は声をかけた。
『首領』
私の声に気付き二人は此方を見た。
エリスちゃんと呼ばれていた半裸の幼女は何故かキラキラとした目で私を見ている。何故か首領も同じ目で私を見ていた。
寒気がしたなんて云えない。
気の所為だ、気の所為だと信じよう。
『御指示に従い参上致しました。ご要件は何でしょうか?』
「善い処に来てくれたよ、A君!」
私と二人の距離は結構あったと思うのだが、首領は一瞬にして此方に来た。余りの勢いに思わず数歩下がってしまったが致し方ないと思う。
「エリスちゃんがね、A君に会えるのなら一着だけ見てあげるって云ってね!」
「アナタがAね!会いたかったわ!」
幼女が嬉しそうな顔をして私に抱きついてきた……勿論、半裸のまま。
確かにこの子は可愛いし、子供に好かれるのも嬉しい。しかし、私はこの場合どう反応するのが正解なんだ。
首領は羨ましそうな顔で此方を見ていた。
『エリス嬢、此方こそお会い出来て光栄でございます。しかし、その格好は……』
一体何時からその格好で居るのだろうか。
余り長い時間そのままで居れば確実に風邪を引いてしまうだろう。
何か善い方法はないかと周りを見渡した時、丁度首領が持っていたドレスに目がいった。
『首領がお持ちのそのドレス、エリス嬢に迚も似合うと思いますので御試着なさってはどうでしょうか?』
「このドレス着たらAは嬉しい?」
『ええ、勿論でございます』
可愛いらしく首をコテンと傾げたエリス嬢にそう告げると直ぐに「着替えてくるわ!」と元気よくドレスを首領から引ったくって隣室に入って行った。
漸く本題に入れる。
私はキラキラと眩しい目で此方を見ている首領に向き直った。
『首領、あの御方はご息女ですか?』
「……?彼女は私の妻だよ?」
本日最大の不穏な台詞を聞いた気がした。
長い沈黙が辺りを包み込む。
『いや、人には誰しも様々な理由が御座いましょう。ええ、判ります。無闇に尋ねて申し訳ございませんでした』
「A君、その
『済みません、首領。何せ初めて経験したものですので動揺しました。一度頭の中を整理します』
そして私は首領に一礼してから壁に一度頭を勢い善く打ち付けた。
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黒龍(プロフ) - Mさん» 嬉しいお言葉、有難う御座います^^ (2019年11月23日 17時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
M - とてもおもしろかったです。 (2019年11月23日 1時) (レス) id: 5a0fa58d7d (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - りーこさん» 有難う御座います!頑張って続き書いていきますね (2019年6月24日 12時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
りーこ - 続きが楽しみです (2019年6月24日 6時) (レス) id: 140e75a81a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒龍 | 作成日時:2019年6月21日 21時