ハーシェルの連星 (ページ42)

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それから一週間くらい経った頃だろうか。

「…………やっぱ言わない方が良かった？」

休日にまで呼び出された理由は、

ただの暇つぶしのようなデートとかではなく。

まさにあの時感じた私の胸騒ぎは的中していた。

"______Aさんとお兄さんってそういう関係だよね？"

会ってファミレスの席に着くなり、間髪入れずに聞かれたのだ。

されど最低限人目を気にし、

プライバシーに配慮するかのように声を小さくしてくれたその人を、

ちょっとは気遣いの出来る繊細さを持った人かも知れないと、心は油断しそうになったものの。

「………さぁ、何のことでしょう？」

久々に飲むカルピスソーダが喉に突っかかる。

兄とギリギリまで抱き合うようにして寝たあの日から、

私の身体はカルピスソーダではなく兄の好きなコーラしか受け付けないという、

謎の変化を遂げていた。

"俺の子妊娠したんじゃない？(笑)"

その事を知った龍也には、

あっけらかんと笑われ、エグい冗談を飛ばされてしまったのだけど。

……あぁ、だけど今はそれどころじゃない。

私が今のこのシビアな状況下で強く念じ唱えるべきことは、

龍也への愛や恋などよりも、

海人くんの憶測を捩じ伏せる鉄壁の仮面だ。

「隠さなくてもいいよ、

実は俺も、人には言えないだけで同じ状況だから」

「………へ？」

「俺の場合は、妹じゃなくて姉だったけど」

ファミレスの奥のテーブル席で、向かい合うようにして話し始めたその人は、

重い内容をカミングアウトすることを感じさせないくらい、

やけにスッキリと、精悍な表情で話し始めた。

「俺の二つ上の姉さんね、めちゃくちゃ可愛いんだ。

まぁ正直、Aさんと雰囲気似てるかも知んない」

「……」

「最初は単純に、優しくて大好きな姉ちゃんだった。

だけど、俺が中学生の頃かな？

ある日、俺が普通に夜ベッドで寝ていたら、

もぞもぞ、忍び込むような感覚がして、」

.

.

そこから先の展開は、

まさに私と龍也が保つべきだと判断したプラトニックを破壊するような、

愛という器を欲を満たした常軌を逸した行為であった。