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横断歩道の手前、二人同じタイミングで足を止めて、

さっきよりもギュッと握っていた手に力を込められた。






痛くはない、

むしろ、包まれるような優しさがある。






「別にAだったら気にしないから」





前を見据えたままのその一言が、

全く抑揚のない冷静な物だったのにも関わらず、




無機質ではなく、情を宿すかのように感じられて、









「……ねえ、龍也」






家に到着して、お互いの部屋へと離れる直前、








「……またこうやって、一緒に帰りたいなって、」





「……俺と?」





他にいないけど……。







だけど意地悪を言っているのではなく、本気で確認している様子だから、







「……うん、龍也とずっと…」








ずっとだなんて、果てのない言葉まで添えてしまった。









兄妹とは、生まれは一緒でも将来は別々。





いつか離れ行く遠い関係なのに。









無意識に私が口に出して求めてしまったのは、このまま変わらず一緒にいられること。









時を止めるくらいの禁忌を望む私に、









「……いいけど、それってもう妹じゃなくない?」






「……」




引かれてしまったのだと血の気が引いた。









兄妹なのに、近付きたいだなんて……無理だ……、









悲しい気持ちで俯いた瞬間、







「…ねぇ、」








龍也に掴まれたままの手が更にしっかりと握られて、






反対の手で伏せて隠れた耳に触れられ、








熱を取り戻しそうな感覚のまま、ゆっくり顔を上げたら、







「っ、」






誰よりも端正で、今まで以上に精悍な顔をした龍也の目が私をよく覗き込んでいた。









「……そしたら俺は、Aのただのお兄ちゃんじゃなくなるけどいい?」









それは何の躊躇いも照れもなく、あまりに堂々と告げられた。








「……う、ん」





引き下がる理由なんていくらでもあるのに、二度頷いては同意した。









好きかどうかだなんて、そんな言葉はいらない。





言わなくてもいい、何の名称もいらない。





だけどその日から、私たちの関係に変化が生まれた。

6→←4



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はるか(プロフ) - 読ませていただきました。切なくて、どきどきして、胸がいっぱいになるお話でした!優しいし龍也おにいちゃんすごくすきです!素敵な作品をありがとうございましたっ (2019年7月28日 4時) (レス) id: 2fad28cd3c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:踊れる人大好き芸人 | 作成日時:2018年9月14日 20時

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