No.16 緑色のキッチン【リク】 ページ16
〆.
恋人の家にお邪魔する、どちらかが手料理を振る舞うことになる。
そこまではごくごく普通の流れだと思う。
しかしこの家のキッチンを見るに、異常性しか感じられないんだ。
「また増えてない?」
「これのおかげで料理もっと好きになるんよ」
私がご飯を食べている写真が、キッチンの壁や天井、食器棚、冷蔵庫、換気扇の横……びーっしり貼られている。
しかも残念なことに、
全て盗撮だったりする。
一緒に食事した時のは別の場所に飾ってあるんだとか。
「私の右手が110を押してしまわないうちに全部剥がしてほしいところだけれど」
「彼氏が彼女の写真撮って何が悪いん?」
「悪いとかじゃなくて、私が嫌なの」
「これがあるから俺、料理頑張れんねん」
見事な包丁さばき。
耳だけはこの状況に癒されてる。
「それはありがとうだけど………何か手伝おうか?」
「はは、気持ちだけもらっとく!隣にAおったら、そっち集中して自分の指切ってまいそうやもん」
「なんか洒落にならないんだよね」
とはいえ、ついつい好きな人の料理姿は見たくなっちゃう。
カウンター越しに眺めていると、智洋は突然手を止め、私の方にズンズンと歩み寄ってきた。
「どうしたの?」
「ちょっとこのお箸舐めてくれん?」
「ん?」
菜箸。もちろんこれから具材を混ぜたりするのに使うやつ。
なぜ。
舐り箸?めっちゃマナー悪いよ?
「美味しいものだけ舐めたい」
「Aの唾液入ってへんと美味くならへんよ?」
「ん?」
何度でも疑問を返そう。
君は何を言ってるのかな?
「舐めたとして、その唾液はかなり少量だよね」
「せやな。隠し味やから」
「ちなみにその料理私の分も作ってくれるんだよね?」
「当たり前!」
らちがあかん!と言ってキッチンの中へ連れ込まれる。
「どうせ食べる時口の中入れるやん」
「まあそれはそうなんだけど」
「今までのキスで、美味いってことは知ってんねん」
「あれはあのシチュエーションだからそう感じるんじゃないの?」
智洋の想いはしっかり伝わってるよ、気持ち悪さも。
どれだけ私を愛してくれているかわかるからこそ、
どうにか彼を正しい道へ誘導できないか考える。
どうにか…………
「……………諦めるしか選択肢出てこない」
「可愛ええ顔してどうしたん?ほら、あーん」
すっっごく負けた気分で
彼の手料理を味わうことになった。
〆.
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ユニコ(プロフ) - ありがとうございました! めっちゃ完璧で良かったです (2019年12月8日 15時) (レス) id: d962cdde80 (このIDを非表示/違反報告)
アイオライト - No29-31をリクエストした者です!最高でした、特に31は兄弟設定がベストオブベストでした…ありがとうございました!これからも応援させていただきます…! (2019年12月2日 19時) (レス) id: dcdc3602ad (このIDを非表示/違反報告)
のら - はゆなさん、いつも読んでいます!更新、とても楽しみです^^ (2019年11月15日 11時) (レス) id: 1a62da02fe (このIDを非表示/違反報告)
はゆな(プロフ) - うらぬす。さん» ええええ!うらぬす。様!コメントも、読んでいただけてることも嬉しすぎて泣きそうです……ありがとうございます!そして勝手にお名前出しちゃってすみませんでした。私もうらぬす。様を応援し、更新楽しみにしておりますので…! (2019年11月10日 15時) (レス) id: 0477dc60f8 (このIDを非表示/違反報告)
うらぬす。(プロフ) - いつも作品読ませていただきます…!オススメされてると聞いてすっ飛んできました(*´-`)まさかいつも読んでるはゆなさんから読んでいただいてると知らずお恥ずかしい限りです…!これからも影ながら応援させていただきます! (2019年11月10日 14時) (レス) id: 3c9d0a7e5f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はゆな | 作成日時:2019年10月21日 18時