Second Opinion

No.13 橙色と鍵 ページ13

〆．



「トイレトイレ〜っと」



一日に数回は行く、トイレ。

もちろん同棲者がいるので鍵は閉めるんだけど……。



………………カチャ。



「…………………またか」



家の中の鍵なんて簡素なもので、うちのはコインでも使えば外から簡単に開けることが出来る。

それは別にいいとする。

なぜ開ける？

しかも、鍵を開けただけで満足し、やつは戻っていくのだ。

もう一度鍵を静かーにかけるも、再びカチャ。



「…………照史さーん？目的わからないんですけど？」

「何の？」

「いや、鍵」

「ああ！やって、鍵開けとけば何かあった時すぐ気付けるやん」

「じゃあ何かあった時に鍵開けてくれない？」

「それはちゃうねん」



なんだこいつ。



「鍵を閉めた後に俺が鍵開けるやん？Aは絶対そのことに気付くやん？もー、ドキドキゾワゾワすんねんっ！」

「今世紀最大の意味不明発言ですね」

「ようは構ってほしいの！」

「違う方法で伝えてくれると有難いんだけど」



………ドキドキ、ゾワゾワ？

その発言がゾワゾワするんだけど、

やつの表情を見るにそれはかなり的確な擬音語らしい。



「ずいぶん気持ちよさげな顔してるね？」

「Aが俺に構ってくれてるからな！」

「鍵を開けるのはただの手段で、とにかく私に構ってほしいと？」



私の言葉に、返事はせず笑うだけ。



「…………最初はただの手段だったのに、次第に鍵開けること自体が快楽へと変化していった感じかな」

「そう！今後もぜひ開けさせてください！」

「拒否権ないじゃん。だって防ぎようないもん。無理やり抑えたら壊れちゃうし」

「拒否権なしとか萌えるな」

「少女漫画に酔っとけ変態野郎」



デコピンしたら「もっと！」とおねだりしてきた。

なにかするたび気持ち悪くなるな。



「鍵開けるの我慢できたらデコピン１回」

「え！嘘やん……ええ…………」

「そんな悩む？」



結局どちらを選んだのかは



………………カチャ。



この音で明らかとなる。



〆．

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