踏切の向こう側/zm ページ1
・語り主はおまかせします
踏切の向こう側には何があると思う？
遠くに見える踏切を見ながら、Aはそう言った。
「……？ 道があるやろ」
「本当に？」
哲学を問うような口振りに、思わず自分の答えに疑問を持ってしまった。しかし踏切の先は道だ。
そもそも踏切は鉄道と道路が平面交差する箇所に設けられる設備である。遮断機と電車によって見えずとも、先にあるのは道だ。
「いつも見えるの」
「なにが？」
「男の人が」
目を凝らして踏切の先を見る。そこには人なんて一人もいなかった。
「多分、私しか見えてない」
「どんな見た目をしとるん？」
「黄緑のフードを被った男の人」
心当たりのない人物だ。他に特徴はないのかと訊いてみたが、フードで顔がよく見えないこと、そして踏切を渡った瞬間に消えてしまうことしか分からなかった。
「幽霊なんとちゃう」
「ここら辺で人身事故ってあったのかな」
明るくない話は苦手だ。Aは悩ましげな声を出す。
「いつも私の対面にいるんだよね……」
「対面？」
「うん。私と同じ道にいないって言えば良いのかな。踏切の反対側にいる」
なるほど、だから先の問いか。
「何があるというより、誰がいるのが正しいんとちゃうん？」
「そうかもね」
段々、踏切に近付いていく。
「フードの人は今もおるん？」
「いるよ」
慣れているのか、Aに怯えた様子はない。
「人がおらん方におるだけで、実は対面にいるわけやないんとちゃう？」
「そうなのかなあ……」
「試してみいひん？ 片方が渡って、片方が残る」
「いいよ。私が渡るね」
幽霊かもしれない男によく近付けるな。顔色を変えずにAは踏切を渡る。
Aが振り返ると同時に、遮断機が降り始める。電車が来るのか。
「フードの男はおるん？」
「……ごめん、私だめかも」
「は？」
遮断機が降りきった。電車の走る音が聞こえてくる。先ほどまで平然としていたAの顔は引きつっている。
「こっちに来ちゃだめ」
「A？ どういうことやねん」
「この人、幽霊じゃない」
目に涙をためるA。
「ずっと私を待ってたって。狭間の向こう側で」
「A？ なに言って……」
電車が俺たちを遮る。
それがAと交わした最後の会話だった。電車が通りすぎると、Aの姿はなかった。
踏切の向こう側には、何があるのだろう。
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脳内お花畑(プロフ) - ちびさん» ありがとうございます！田中さんですが、既に活動されていないのでアカウントは見つからないと思います…… (6月18日 16時) (
レス) id: 474916695b (このIDを非表示/違反報告)
ちび - うつくしいからゆっくり読まさせて貰ってます。とても好きです…田中様のイラストなのですが一通り探したのですが今も垢ありますでしょうか…？探し切れて無いだけかも知れませんが知っていたら教えてくださると幸いです。これからも応援してます (6月12日 7時) (レス) @page6 id: 3cdb4a4830 (このIDを非表示/違反報告)
月峰一樹(プロフ) - 教えてくださりありがとうございます……！文字数の関係で少し崩れた言葉になっていて申し訳ないです……。下でも書きましたが、これからも応援しております……！ご親切にありがとうございました……！ (2021年2月6日 2時) (レス) id: cb8c485acf (このIDを非表示/違反報告)
脳内お花畑(プロフ) - 月峰一樹さん» 嬉しいですありがとうございます〜！従順な女は18/6/23の国営放送でDVは18/4/7の国営放送です〜！有料なのでch会員でしたら是非見てみてください！ (2021年2月6日 1時) (レス) id: 1816461051 (このIDを非表示/違反報告)
月峰一樹(プロフ) - コメント失礼します。全部刺さり過ぎて……凄く好きな作品です……！初対面で申し訳ないのですが、knさんのソースってどこですかね…？(このコメントがダメなようでしたら消します)これからも応援しております……！作者様のペースで頑張ってくだたい！ (2021年2月6日 0時) (レス) id: cb8c485acf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：脳内お花畑
| 作成日時：2021年1月15日 19時
