WH-2 ページ35
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サンタクロースの正体に気付いたのは、小学生の頃だった。
母の負担を減らしたくて、「今年は、サンタさん来なくていい」と言ったら母がショックを受けていた――のを隠そうとしていたが、子どもは親の表情の変化に敏感なものだ――ため、しばらくは素直に欲しいものを伝えていた。
中学生や高校生になると、彩花をはじめ友達と過ごすこともあった。そのうちに母が亡くなり、高校を卒業すると友人たちとは疎遠になった。
だから、本当に慣れているのだ。クリスマスを一人で過ごすことに。
「ただいまー」
当たり前だが、部屋は真っ暗で冷えきっていた。
いつもなら、天馬か剣城が私が帰ってくる前に暖房をつけてくれている。ちなみに、二人は人間界の暑さや寒さを感じないらしく、家に私がいないときは空調をつけずに過ごしているらしい。
かじかんだ指先は、お風呂であたたかくほどけた。
剣城が作っておいてくれたシチューを温める。あとは袋から皿に移しただけのミックスサラダと、軽く焼いたパン、飲み物。テーブルにタブレットを置けば、クリスマスディナーの準備は完璧だ。
ケーキも一瞬考えたけれど、二人がいないなら食べなくてもいいか、という結論に至って、用意していない。
視聴履歴は天馬が観た映画で埋まっていた。どれも観たことがある作品だったが、今日はそういう名作が観たい気分だった。今日はクリスマス・イブだから。
少年が窓の外に手を振って、クリスマス上映は幕を閉じた。もうすぐで日付が変わろうかという時間だ。
膝に乗せたヒツジの抱き枕の重みが心地よい。このまま眠れそうだったが、最後の力を振り絞ってベッドに移動した。
ぱたた、と細かい雨粒が窓を叩く。私はベッドに溶けるようにして眠りに落ちた。
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作者名:はるま | 作者ホームページ:https://twitter.com/April_hrm
作成日時:2022年10月13日 0時