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「やっと終わりましたね……」
談話スペースの椅子にずるずるともたれかかっていると、小湊さんがくすりと笑って「飲み物買ってきました」と缶をいくつかテーブルに置いた。
「わ、すみません。ありがとうございます。」
「いいの、いいの。どれがいいかわからなかったから、好きなの取って。厚木さんは無糖でしたっけ？」
「うん。ありがとう」
確か、私は微糖のコーヒーとココアを手に取ると、ココアを駒井さんに渡した。
眼鏡作戦は、成功の範囲内と言っていいだろう。プレゼン慣れしている小湊さんと、あまり緊張していなかった厚木さんに比べれば、私と駒井さんのプレゼンはたどたどしいものだったかもしれない。
それでも、何とかリハーサル通りには進んでいたし、内容に対する批評はあっても、発表の仕方で悪いことは言われなかった。
その代償と言っては大げさだが、駒井さんは久々の眼鏡で目が疲れたらしく、先程から眉間を揉んでいる。
「視界がぼやけてて……すみません」
「今日はもう終わりだから、駒井くんもAさんも小湊さんも、早く帰って休みな」
「ありがとうございます」
厚木さんが缶を顔の前あたりまで上げる。私たちもそれに倣った。
「それじゃあ、みんなお疲れ様。乾杯！」
「乾杯！」
かつ、と缶のぶつかる音が軽やかに響いた。
．
「Aさん」
強ばっていた肩をほぐしながら会社を出ると、駒井さんに呼び止められた。
「今日、ありがとうございました」
「ううん。プレゼン良かったよ」
「Aさんに相談して良かったです」
そう言って、駒井さんはわずかに口角を上げた。思えば、彼の笑顔を見たのはこれが初めてだった。
「私も役に立てて良かった」
言うと、駒井さんは「引き止めてすみません」と頭を下げた。
「気にしないで。お疲れ様」
「お疲れ様です」
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作者名：はるま | 作者ホームページ：https://twitter.com/April_hrm
作成日時：2022年10月13日 0時
