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それから天馬は、同じく末期がんの高齢女性、心筋梗塞で運ばれてきた男性、それから交通事故で運ばれてきた男性を天国に送り届けた。私はあまり気が乗らず、それを少し離れたところから見ていた。
「今日はこれで全部なんだけど、担当の人たちの様子を見て回ってもいい? 悪魔が近付いてたら厄介だから」
「いいけど……悪魔は人間に何をするの?」
「その人が悪さをするようにそそのかすんだよ。悪いことをした魂は、地獄に連れて行けるから」
話しながら歩いた先には、大部屋が並んでいた。天馬と私はまた看護師の制服に着替え、いくつかの部屋を見て回った。
がん、心臓病、肺炎――私とそう歳の変わらない人もおり、近いうちに亡くなってしまうのかと思うと、落ち着かなかった。
中でも印象に残ったのは、小学生くらいの女の子だった。何の病気かはわからないが、窓際のベッドに横たわって、ただ窓の外を眺める姿は見ていて胸が苦しくなる。
「あの子も連れて行くの?」
「うん。でも、あの子は天国に行けるから」
それが、とても良いことであるかのように天馬は言った。
死ぬことよりも、天国に行くか、それとも地獄か、ということのほうが、天使にとって重要であることは理解できる。
しかし、その横顔に、悲しみの欠片も感じられないことに胸がざわつき、思わずたずねた。
「天国って、そんなにいいところ?」
天馬はその日一番の笑みを浮かべて言った。
「もちろんだよ!」
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作者名:春間 | 作者ホームページ:https://twitter.com/April_hrm
作成日時:2022年9月11日 15時