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「ヒバリ君」
夏の日の応接室。空はすっかり真っ青に晴れわたり、わたあめみたいな雲がそこら中に散りばめられていた。
いつものように、ヒバリ君は仕事をしていて。私は客人用のソファで適当な本を読んでいる。偶に草壁くんが訪ねてきて、ヒバリ君と仕事の話をして、また去っていく。
──そんな日常の中、私は立ち上がり、ヒバリ君の机の前を横切った。そしてそのまま振り返って、前屈みになって、彼の机に肘をつく。彼は私が立ったことに気がついても、こちらには見向きもしない。だから、彼の整った顔を覗き込むように微笑んで、口を開いた。
「ずっと気になっていたんだけれど」
机の上に置かれたペン立てのペンに指を置き、指で回す。固定されていないペン立てはくるりくるりと机の上を不規則に回った後、底のゴムが滑り落ちてかたんと倒れた。
「どうして私の事は咬み殺さないのかしら」
今更？なんて思われるかもしれないけれど。正直、彼にとって私を傍に置いておくメリットが分からないの。ただでさえ私は喧嘩が出来ないのに、お茶出しが出来て群れていないからってだけ……なんて、中々考えにくいでしょう？
暫くの沈黙。彼はそれでも書類に目をやったまま。私の声が聞こえているのかしら、なんて思っていたら、ヒバリ君は目線だけこちらに寄越して小さく口を開いた。そこに少しの溜息を混じらせて。
「……ただの気まぐれだよ」
「そう」
予想通りの答えね、なんて。彼は私が何を考えているのか分からないでしょうし、私も貴方が何を考えているか分からないわ。
「今日はクッキーを焼いてきたの。私の手作りよ」
かさ、とクッキーの入った袋を取り出せば、もうこの部屋の空気はお茶会モードに。今日は茶葉もうちから持ってきたのよ、と話しながら、鞄の中に手を入れて缶を取り出そうとする。
( "ちりん。" )
「ヒバリ君の為に作ったの。さぁ、召し上がれ」
紅茶とクッキーの香り、夏の匂い。王様は少し不機嫌みたい。
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もも(プロフ) - まーぶりんさん» コメントありがとうございます。お褒め頂き光栄です。私自身気に入っていない部分が多い為近々大型修正が入るかと思いますが、それまで今の本作品を楽しんでいただけますと幸いです。 (2021年9月20日 6時) (
レス) id: f920ea46f5 (このIDを非表示/違反報告)
まーぶりん(プロフ) - 初めて読んだ感じの小説で，凄く面白かったです！続き楽しみにしています！更新頑張ってください！！ (2021年9月19日 17時) (レス) id: 045921842f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もも | 作成日時：2021年9月12日 15時
