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夏が過ぎ、秋がきた。
おばあちゃんは頑張って生きようとした。
体調が悪いのを隠してみたりした。
柔らかいうどんをおいしいと言って食べた。
薬を減らして、味がよくわかるようにした。
おいしいと言ってくれることが嬉しかった。
私の長い夏休みが終わった。
おばあちゃんと過ごす、最後の夏休みだった。
・
10月の半ば、地元では毎年恒例の秋祭りが行われた。おばあちゃんは玄関から、お神輿をみて喜んでいた。
私も今年は祭の手伝いに帰り、おばあちゃんとお神輿をみることができた。
当たり前のように毎年この日を迎えていたけれど、
今年はこの日を家族全員が迎えられることも半ばキセキのようなもの。
とりあえず、おばあちゃんが祭にでられてよかった。
・
それからすぐに、大学に戻ったわたしだけどおばあちゃんとあと何回話せるだろうかと、できるだけ毎日電話をするようにした。
おばあちゃんの体調は日によって異なり、ベッドからの電話もあれば、ソファでごはんをたべる電話もある。
私が電話をすると、照れたようにすこし澄ました顔をしていた。
声が出にくいおばあちゃんだけど
「おばあちゃん、今日はどう?」
そうきくと
「今日はヨーグルトと、ごはんこれくらい食べた」
と手でマルを作ってどれくらい食べたかを教えてくれた。
食べないとげんきでないからね、としつこく何度も何度も言って帰っていった私に心配させないようにそう言ってたんだろうなと思う。
11月の初め頃から少しずつ、弱くなっていくのを感じはじめた。
いつ、とかそんなことはわからないけど
その日は近いのかもしれないと何となく、勘付く。
今週末、帰ろう。
サプライズで帰って、あいたい。
びっくりさせてあげよう。
この時ばかりは、せっかちで、後悔をしたくない私の性格が役にたった。
普段はなんの役にもたたないけれど、結局どんな自分も、どんなことも無駄はないみたい。
・
週末、私は夜行バスに乗って14時間かけて地元に戻った。
朝10時過ぎ、おばあちゃんちのドアに手をかけた。
こっそりこっそり入ると、小さい時みんなをおどかそうと弟と企んでいたあのワクワク感を思い出す。
どんな顔するかな?って
「おばあちゃーーん!」
「ただいまーー!」
わざと大きな声で現れてみたりした。
そしたらおばあちゃんがキツネにつままれたような顔でキョトンとしてから少し泣いたように笑った。
あの時のおばあちゃんを私はきっといつまでも忘れないんだろう。
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作者名:meeeta. | 作成日時:2017年6月13日 14時