吸血姫は眠りに誘われる3 ページ18
自室に戻りシュウの可愛いスーツ姿を見れることにニマニマしていると、冷たい風が頬をなでた。
蜘蛛の巣に虫をくっつけて捕食するところを観察しているのを目撃したレイジの視線より冷たかった。
「ん?」
これ以上自室が冷気に侵略されないよう窓を閉めたAの先に散乱した参考書がある。
だが、Aの視線の先に映っているのは参考書ではなく見るからに怪しげな古ぼけた厚みのある一冊の本だった。見覚えのない本に目を奪われたが、直ぐに本の正体を思い出す。
「懐かし〜、悪い意味で」
この本は幼少期の誕生日にカールハインツがくれた禁忌魔術について記されたもので、見た目通り子供に勧めるような内容の本じゃなかったという苦い思い出があった。風に揺られたのか本は中途半端なページで開かれている。Aはちょっとした好奇心で『死者蘇生』のページに目を通した。
「な〜んだ、人間しか蘇生出来ないんじゃん」
ヴァンパイアの蘇生だったら使えたかもしんないのに...
そんな考えが頭をよぎったが、弟の死期を想像してしまい条件反射で本を閉じた。
「まっ、今後も使うこともなさそうってことが分かっただけでも収穫かな」
ポジティブ思考に繋げなければ弟達の死がチラついて寝られそうもない。全ての元凶である本を八つ当たりも含めて無造作に放った。
日が出始める前だったが、嫌な考えを振り払いたいたいAはベットに横たわり瞼を閉じる。
そんなAを嘲笑うかのように表紙に埋め込まれた紅玉は煌々と輝き、静寂が包む部屋に規則正しい寝息が聞こえる頃には闇夜にとけていった。
※※※
使い魔は主人であるA眠りに着いたのを確認すると、獣の姿からカールハインツの面影を感じさせる人型の姿になる。弟が生まれる前、男をカールハインツしか見たことがなかったAが生み出したのが彼であったため、容姿が似ていた。
彼が隅に追いやられている掛布団をAにそっと掛けると、掛布団にすり寄り穏やかな表情になる。
「愛おしすぎてどうにかなってしまいそうだ...」
Aのこめかみにキスをして落とし、物足りげにリップ音を響かせ離れる。部屋内に残るリップ音に耳を澄ませ余韻を楽しんでいると、複数の殺気が彼を襲った。だが次の瞬間、先の殺気が子供だましに思える程の殺気が彼から放たれる。
複数の怯えを感じ取った彼の唇が弧を描き、愉快そうに細められた目が窓の外を見据えた。
「ケツの青いクソガキなんぞに、我が主を奪われてたまるものか」
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もこ(プロフ) - 初コメ失礼しますね!私逆ハー大好物なので嬉しいです!ディアラバのキャラ全員推しなので嬉しいです!更新頑張ってくださいね! (2023年4月17日 21時) (レス) @page7 id: 3b02df20c8 (このIDを非表示/違反報告)
しゅり(プロフ) - 続きが気になります!更新楽しみにしてます! (2021年2月13日 3時) (レス) id: 2d9e53b3e9 (このIDを非表示/違反報告)
*SSU* - つ・づ・き・が・た・の・し・み♪ (2020年4月28日 10時) (レス) id: b6be28c7e2 (このIDを非表示/違反報告)
まゆた - つづき楽しみにしてます! (2020年3月8日 10時) (レス) id: 6c85c6c733 (このIDを非表示/違反報告)
神 - わぁー! 返信ありがとうございます。応援しています! (2019年10月10日 21時) (レス) id: 090390c6c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜蘭 | 作成日時:2019年5月15日 19時