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その折原という少女は齢十八にして此の学館へ雇用された。国木田の記憶が正しければ当時はまわりから極めて異様な目で見られていた筈だ。
普段ならば生徒たちを眠りへ
「気分を害してしまったなら申し訳ない…その、覗く積りは無かったんだが…」
『いいえ、お気になさらず。私が人より人の気配に敏感なだけですので』
カラコロと笑った表情は年相応のものだった。
十八の少女のものだった。
彼女が此の学館へ来て随分と経ったが、国木田にとってちゃんとした会話は此がはじめてであった。
館長によって紹介された当初は其の異様さに目を剥いたのをよく、覚えている。まだ年端もいかない幼い少女だというのに教鞭を振るうことには勿論だが、何より彼女の目が、酷く詰まらなそうだったのだ。長い睫毛に縁取られた深緑が何も映さないままぼんやりと揺れていた頃に比べれば、今は幾分か楽しそうに見える。
『以前から、国木田先生とはお話したいと思っていたのです。数学の先生が、怖いけれど優しくて教え方が上手で分かりやすいと。どのような方なのか気になっていました』
折原は気恥ずかしそうにほんのり頬を朱に染めて笑った。
複数の教科を選択できるため、学館内では其のように多教科選択する生徒も多くある。
元々週二回だけの来館であり、ほとんどを本業である武装探偵社での仕事に務めているため国木田は特定の生徒と交流を深めるといったことが無かった。折原に週何度此所に訪れるのか尋ねれば四回だと返され、かなり多くの時間、生徒と話す時間があるのだと知った。
「俺も、貴女の噂は他の教員からよく聞かされていたが、随分と教えるのが上手いらしいな。一体何処で学んだんだ? 」
『お恥ずかしながらに私、学校というものに通っておりませんでしたので、育ての親や兄に教えていただいておりました。幸い、お二人とも博識でしたので』
なんとなく気まずい所に触れてしまったような気がして国木田は済まないと謝ったが、折原はお気になさらずとまた微笑んだ。
『さてと、其ではそろそろお暇させていただきますね、国木田先生、さようなら』
「その、なんだ、その"国木田先生"というのは止さないか?国木田でいい」
『ふふ、それでは"国木田さん"また今度』
ひらり、赤いカアデガンを翻し折原は去っていった。
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綾舞町 - 花夢園さん» 中々無いですよね、彼のお話は(笑)少々書くのが難しいですが彼の格好いい姿を表現できたら、と思いっています!有り難う御座います! (2016年8月4日 20時) (レス) id: a2978e8fa9 (このIDを非表示/違反報告)
花夢園 - 国木田さんの恋愛ってレアですね〜とっても面白いです! (2016年8月4日 16時) (レス) id: a92783a906 (このIDを非表示/違反報告)
綾舞町 - 百久一目さん» 本当ですか?!有り難うございます!!結構天然な部分の有る子なので……(笑)国木田さんともっとイチャイチャさせるようにしたいです。 (2016年7月1日 17時) (レス) id: a2978e8fa9 (このIDを非表示/違反報告)
百久一目(プロフ) - 夢主(?)ちゃん、可愛い…(惚) (2016年7月1日 13時) (レス) id: 421761368c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:綾舞町 | 作成日時:2016年6月12日 18時