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「え、国木田さんと折原さんが…!?」

もたれ掛かった椅子の背凭れをギッと音を立たせ敦は向かいの仕事机(デスク)に座る谷崎に疑いと驚きの混ざる目を向ける。そのまま彼は続ける。

「国木田さんが昔いた学館、実は折原さんも其処で働いていたらしいンだ。で、二人は想い惹かれあってお付き合いを──」

「まだ付き合っていないよ、あの二人」

突如としてぬっと現れた木偶に話に夢中だった敦と谷崎は思わず声をあげる。背後に現れたのは敦を武装探偵社に招き入れた張本人である男、太宰だった。
真っ黒な手入れの行き届いていないであろう蓬髪と砂色の外套を揺らし、緩慢な動作で自身の仕事机へ着く姿は顔が非常に整っていたからかひどく美しく見える。然しその実、自 殺趣味といった奇妙な趣味を持ち合わせ、町行く美女を心中へと誘い、業務を放棄して川へ飛び込む社会不適合者なのである。非常に残念だ。

「ど、如何して太宰さんがそれを…」

「だって私が許可していないもの」

ピシリ、一瞬空気の乾く音がした。無理もないことだ。何しろ国木田と折原が交際するにあたり太宰が口出しする必要が見当たらない。

「彼女ね、私より数ヶ月遅れて此の社へ入社したのだけれど、居たのはほんの一年程度でね。半年くらい前からお役所からの依頼であっちこっちに飛び回っていたから知らない人も多いのだよね。だから敢えて云うけれどAと私は───」

ごくり、生唾を飲み込んだ二人の少年は緊張の面持ちで次の言葉を待った。続けようと太宰が口を開こうとしたその時──

『やっとお戻りになったのですね、兄様(あにさま)

キラキラと嬉しそうな表情で太宰へ駆け寄った折原に続くように、呆れた表情の国木田も此方へと寄ってきた。

「…そう、妹なのだよ。血は繋がっていないけれどね」

──兄様から噂はかねがね伺っておりますの

「あ」

敦の中で欠片(ピース)の嵌まった瞬間だった。
唸った太宰は仕方なさそうな面持ちで、おかえりAと云いながら彼女の頬を撫でる。後ろで国木田が何やら吠えたが太宰は気にした様子を見せなかった。

「それで、Aも帰って来た訳だけれど国木田くん、私に何か云うことがあるんじゃないのかい?」

ねぇ?とにんまりいやらしく笑う太宰に国木田はぐう、と唸る。折原は気恥ずかしそうに一歩後ろへ退いた。


「……お、俺達の交際を認め」

「やぁだ」


国木田の怒鳴り声が響き渡った。



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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 恋愛 , 国木田独歩   
作品ジャンル:恋愛
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綾舞町 - 花夢園さん» 中々無いですよね、彼のお話は(笑)少々書くのが難しいですが彼の格好いい姿を表現できたら、と思いっています!有り難う御座います! (2016年8月4日 20時) (レス) id: a2978e8fa9 (このIDを非表示/違反報告)
花夢園 - 国木田さんの恋愛ってレアですね〜とっても面白いです! (2016年8月4日 16時) (レス) id: a92783a906 (このIDを非表示/違反報告)
綾舞町 - 百久一目さん» 本当ですか?!有り難うございます!!結構天然な部分の有る子なので……(笑)国木田さんともっとイチャイチャさせるようにしたいです。 (2016年7月1日 17時) (レス) id: a2978e8fa9 (このIDを非表示/違反報告)
百久一目(プロフ) - 夢主(?)ちゃん、可愛い…(惚) (2016年7月1日 13時) (レス) id: 421761368c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:綾舞町 | 作成日時:2016年6月12日 18時

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