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その三 ページ23

しゅうううう

沙世は呼吸を整え、どろろに「絶対離さないでね」と注意を言う。

「え?え!?」

(水の呼吸・玖ノ型 『水流飛沫』)
「わああああああ!?」

どろろを背負った沙世は走る。この技は剣術ではなく動作中の着地時間・着地面積を最小限にし、縦横無尽に駆け巡ることを可能とする歩法。足場の悪い場所での戦いに適している。 さらには彼女は修行時代、師匠特製罠(刃物が飛んでくる危険な物)が仕掛けられた山を駆け下りた。なので罠の無い森を物凄い速さで走れるのは当然なのだ。少しして、百鬼丸と鬼神がいる場所に到着した。
鬼神は百鬼丸の造った足に咬みついている。しかし足が壊れた時、タケ達から貰った刀が顔を出す。百鬼丸はそのまま刀を鬼神の口を突き刺した。おかげで百鬼丸は一旦離れられる。

「百鬼丸兄さん!!」「兄貴―――-!!」

沙世とどろろは百鬼丸へ叫んだ。百鬼丸は昼間、沙世から教わった彼女の師匠の言葉をかかと落としで再現する。『刀には力を真っ直ぐに乗せること』を。力を真っ直ぐに乗せられた刀は鬼神の首を完全に斬り落としたのだった。



奪われた右足は元に戻った。百鬼丸達はミオ達が待っている廃寺へ帰る。

「足が戻って良かったな!」
「でも帰ったらミオさん達に叱られなさい!」

どろろと沙世が百鬼丸に言っていると百鬼丸は何かに気づく。
「百鬼丸兄さん?」
「…どうした兄貴? ……寺が!?」
寺がある場所から黒い煙が出ていたのだ。百鬼丸達は大急ぎで寺へ行く。そして彼らが見たものは…

「み、みんな!?」
ごうごうと燃える寺、血に染まって倒れるミオ達だった。襲ったのは酒井の敵国の兵、ミオは商売の為両軍に行き来したため、密偵の疑いありとして早急に処分された。しかしどろろはそんなことは聞いていない。ただただミオとタケに駆け寄りたかった。兵がそれを邪魔をする。

「やはり仲間か!」
「どろろ!」

沙世はどろろを抱きしめ、刀で弾こうと構えた時だ。

ざしゅ…

兵の腕が斬り落とされた。斬り落としたのは百鬼丸。痛みのあまり、悲鳴を上げる兵を無視し、沙世とどろろはミオとタケの元へ行く。

「姉ちゃん! 姉ちゃんしっかり!? タケ!」
「ミオさん!タケくん!」

呼びかける2人、しかしタケはこと切れており、ミオは涙を流しながら小さい声で言っていた。

「あ…、かい はな つんで…、あの人に…」

あの綺麗な歌だ。しかしその歌声は小さくなっていく。

「ミオさん!?ミオさん!?」
「姉ちゃん…あああああ!!」

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作者名:AYAAYA | 作成日時:2019年2月24日 21時

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