五拾弐 ページ6
ため息をひとつついたAは、ボーッと周りの薬品を眺めながら口を開く。
『たんじろーたちをきょーちゃんのお手伝いに推薦したんやっけ』
「そうですよ」
『しーちゃんもなかなかの目利きになったもんやね』
「柱ですからね」
『………しーちゃん、』
「要件は何ですか閼伽さん」
『何をそんなに怒るんや』
少し食い気味にAはしのぶに尋ねた。
しのぶがAに冷たいのはいつもの事だったが、今回は少しばかりおかしい。
ここまであからさまにしのぶが《怒っています》と主張したのは、恐らく2年前以来。遠征前に蝶屋敷を訪れた時以来だろうとAは思った。
『…心配せんでも俺は大丈夫や』
「心配なんてしてません。自意識過剰じゃないですか?」
『……無茶ならせーへんよ』
「信用できません」
『今度は怪我したらちゃんと蝶屋敷で大人しくするから!玄関から入るし!約束するから!』
「………」
『約束守らんかったら腹踊りする!な?それでええやろ?』
「………」
『あ、せや。帰ってきたらしーちゃんの好きな生姜の佃煮作る!』
両手を合わせて身をかがめるA。
片目を瞑り、恐る恐るしのぶを見る。
作業の手を止めてツンとしていたしのぶだが、あまりにも必死にAが頼み込むのを見て思わずフフッと笑ってしまった。
「…腹踊りはしないでください」
『え?見たないん、俺の腹踊り』
「見たくないです」
今回ばかりは折れずに怒り続けようと思っていたしのぶだったが、Aの前ではその決意も揺らぐ。
訛りのせいもあるのだろうが、この男の喋り方は何故だか緊張感を無くしてしまう。
笑いを押し殺しながらAの方を見るしのぶを見て、へにゃりと力が抜けたようにAも笑った。
『いってきます』
「気を付けて」
少しだけ頷いてAは背を向けた。
ヒラヒラ〜と手を振りながら部屋から出ていくその背中は逞しい。
紛れもなく剣士のそれだった。
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大正コソコソ噂話
「Aは、蝶屋敷の三人娘の区別がついていない」
『義勇ちゃん、急にタレコミ話辞めてくれへん?』
「きよ、すみ、なほの3人と話す時に名前を呼ばないのはそのせいだ」
『義勇ちゃんだからタレコミやめてそれ秘密やから』
「…名前は覚えた方がいいと思うぞ」
『……はい』
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karion(プロフ) - こんなに感動したのは久々で思わず泣いてしまいました(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)続き楽しみにしています(≧∀≦) (5月19日 17時) (レス) @page50 id: d59aca9a13 (このIDを非表示/違反報告)
タロ。(プロフ) - トカゲさん» ありがとうございます!ただいま制作中ですので、お楽しみに!! (2020年5月14日 17時) (レス) id: dd9aff063c (このIDを非表示/違反報告)
トカゲ(プロフ) - すごい面白かったです!!続きが気になっております!続編頑張ってください! (2020年5月10日 22時) (レス) id: 8140af0e98 (このIDを非表示/違反報告)
タロ。(プロフ) - スリーパー(?)さん» 涙まで……!!ありがとうございます、本当に嬉しいです!更新、頑張りますね!もう少し、静柱のお話にお付き合いよろしくお願いいたします! (2020年4月28日 15時) (レス) id: dd9aff063c (このIDを非表示/違反報告)
タロ。(プロフ) - 雪もちさん» その言葉だけでも励みになります!ただいま下書きに勤しんでいますので、今後も応援のほど、よろしくお願いいたします! (2020年4月28日 15時) (レス) id: dd9aff063c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:タロ。 | 作成日時:2019年10月20日 19時