卅肆 ページ36
Aは怪我の治りが遅い。
炭治郎たちに比べると幾らか早いようだが、他の柱に比べると遅いようだった。
故に蝶屋敷で世話になる日数も長くなる訳で、本人は暇そうに中庭にいることが多かった。
そんなAを見つけたのが善逸である。
良く日の当たる縁側に座り、ボケっと何処かを見るA。善逸も認めざるを得ないほどその光景は美しかった。
黙ってればいい男なのにと善逸は改めて思う。
その美貌に腹が立つこともAの性格を知るほどに馬鹿馬鹿しくなってくるほどだ。この男はそれぐらい残念である。
「……何してんですか」
『……?ぜんいっちゃんか』
こっちおいでと手招くA。
善逸が腰を下ろすとその顔を少しだけ善逸に向けてから、視線を元の位置に戻した。
この男からは、耳触りのいい音しかしない。そう善逸は感じていた。
そして同時に、感情の読み取れない音だとも感じていた。
ひとつの音が、永遠と木霊するような不思議な音だ。
一体何を見ているんだろうと善逸が視線を辿ると、その先には花壇に植えられている花たちがあった。
日光を一心に受け、鮮やかに自らの美しさを主張している。
「……花、好きなんですか?」
『普通かな』
「普通って…」
『目線の先にあったからな。何色なんやろって思ってん』
「…え、でもアンタ、色って…」
しれっとした顔でそう言ったAは、花を睨み続けている。
だが確か、Aには色が見えているはずだった。
初対面のあの時、Aは炭治郎に鬼の色について聞いていたのを善逸はハッキリ覚えている。
善逸が言わんとすることを感じたのだろう。
Aは視線を花から逸らさずにその詳細を語った。
『…俺はな、その人が身に纏う【色】……つまり感情の色とか個性の色とか人間関係の色っていうのが見える代わりに、普段ぜんいっちゃんたちが見えてるような【表面の色】っていうのが見えてへん』
俺の暮らす世界は常に白黒の世界や、とAは言った。つまり、炭治郎が匂い、善逸が音で感じとるものを色で感じとっているAだが、花の色や布の色も分からないというのだ。
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隆弘 - 誕生日一緒だァァァァァ⁉︎今日から読み始めるので楽しみって感じです‼︎ (2022年7月25日 0時) (レス) @page1 id: 4c1fa166fb (このIDを非表示/違反報告)
タロ。(プロフ) - 拙い説明で申し訳ありません……!ですが、ありがとうございます! (2020年1月21日 18時) (レス) id: a185b79d93 (このIDを非表示/違反報告)
タロ。(プロフ) - ルルさん» ご指摘ありがとうございます!紛らわしい書き方をして申し訳ございません…あくまで、炭治郎には火の呼吸という認識をワザとさせています。その後の閼伽が「日…ではない」と語っていますので、ここの間違いは意図的となります (2020年1月21日 18時) (レス) id: a185b79d93 (このIDを非表示/違反報告)
ルル - 珊しちでした (2020年1月21日 17時) (レス) id: 2200c5b181 (このIDを非表示/違反報告)
ルル - 珊じゅう話の炭次郎が言ってる呼吸が日の呼吸ではなく火の呼吸になってます (2020年1月21日 17時) (レス) id: 2200c5b181 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:タロ。 | 作成日時:2019年9月25日 21時