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噂話、壱 鳥になりたかった少年 ページ21





頸が斬られた。



体が床につく感覚がたまらなく嫌だった。



死ぬのならば、空中で死にたかったと願った。

_________________________________

古く寂れた廃村がぼくたちの隠れ家だった。

僕の仕事はみんなが使う鳥の世話をすること。
何の仕事に使うのか分からなかったけど、
お父さんが「とっても良いことで
みんなの役に立つことなんだよ」って言ってた。
僕の大好きなお父さんがそう言うんだから、
間違いないんだろう。

それに鳥さんたちはみんな可愛いから、
お世話するのはとっても楽しい。

『桜木、暁、緑碧……。
 森宮、寄幸、恋討、瀬津……あれ?』
「どうした、轟」
『冨谷兄さん、おかしいんです。
 いつもなら瀬津の隣の籠に
 蒼華が帰ってきてるのに、帰って来てないんです』
「アオカ?
 ……ああ、あの鶴な」


冨谷兄さんはそのとき、
どんな顔をしていたっけ?


「あの鶴なら、もう帰ってこないぞ」
『ど、どうしてです?
 病気になっちゃったんですか?』
「ハァ……?
 お前、知らねぇで世話してたのかよ」
『何を?』


兄さんは、笑顔だったんだ。


「俺たちは鵜飼いなんかじゃない。
 だいたい、鶴や鷹を飼う鵜飼いが何処にいんだよ」
『お、お父さんがこれは皆、鵜だって……』
「こいつらはな、皆 ヒトゴロシの道具なんだよ。
 お上から許可をもらって、依頼をもらう。
 それで俺たちが鳥をしつけて、
 依頼された人間に売ったり、
 近づけてシゴトさせるんだよ」


ヒトゴロシのどうぐ?
こんなに優しい鳥さんたちが?


『そんな、そんなはず…ない』
「おーい、大丈夫か?
 ま、こんなの日常茶飯事だから気にすんな」


兄さんはそう言って僕の頭を撫でた。
その兄さんの顔は笑顔だった。


『ない、ない、ないないないないないないないないないない
 ないないないないないないないないないないないないない』


嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!

僕がそう叫ぶと、
背後で羽音が大きく聞こえた。

正面を見ると、青ざめた表情の兄さんがいた。

_________________________________

僕は結果的に褒められた。

でも嬉しくない。

だって、お父さんも、お爺ちゃんも、お母さんも
みーんな。


「お前はセンゾガエリだったんだな」


意味が分からないよ。


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三千幸 - 雨雲さん» うへぇ、そんなに言ってもらえるとは光栄です……( 三甘*´艸`) (2019年12月9日 19時) (レス) id: d839c37112 (このIDを非表示/違反報告)
雨雲(プロフ) - マジで最高なんですけど、、え、マジで(語彙力) (2019年12月8日 22時) (レス) id: 75cba6923f (このIDを非表示/違反報告)
三千幸 - 蓮さん» アリガトウゴザイマス―――! (2019年12月3日 19時) (レス) id: d839c37112 (このIDを非表示/違反報告)
- 面白いいいいいいいいいいいいいいい! (2019年12月3日 19時) (レス) id: 947501fbf1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:三千幸 | 作成日時:2019年12月2日 21時

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