【鬼滅の刃】愛してる、誰よりも。【短編集】

☆一方通行の愛【産屋敷耀哉】 ページ37

これは、愛されなかった愚かな剣士の話だ。



「別れた方がいい。いや、別れるべきだ。」

「あれだけは、駄目だわ…。絶対…。」

今日は、煉獄と甘露寺か。

それは、何度も聞いた、同僚たちからの戒め。
だが、例え何度言われようとも変えるつもりはない。

「……御館様が、私を愛してくれる限り、私は御館様を愛する。」

昨日は、時透と不死川。
一昨日は、伊黒と胡蝶。
更にその前は、冨岡と悲鳴嶼、宇髄。

皆、口を揃えて、「別れろ。」だ。

「A、君が御館様とこのまま付き合っていても、幸せになる未来なんてない。」

「私も…お勧めはしないわ。Aちゃんになら、もっといい人がいるはずよ。」

「うるさい……！！私の幸せを、私の未来を、お前らが決めるな……！！」

「あ、待って！！Aちゃん！！」

私を真っ直ぐ見つめる煉獄も、私を心底心配そうに見つめる甘露寺も、何もかもが嫌いだ。

私には、御館様さえ居てくれればいいのに。



「おや、泣いているのかい？」

「御館様……。」

無意識に、御館様の所へ来てしまった。
だが、勝手に来た上に、泣いている私に御館様は腕を広げてくれた。

「遠慮しないで、此方へおいで。」

「御館様っ…！」

抱き締めてくれる腕が、御館様の香りが、酷く私を落ち着かせる。
きっと、この人を失う時が私と死すべき時だ。

「また、考えてはいけない事を考えてるね。私の事だけ、考えなさい。」

食らいつくような口付け。
息をすることすら、許されない。

「はぁっ、御館様、愛してます。」

「私もだよ、A。愛している。」

「貴方の為に死ぬのなら、この命も惜しくありません。」

「私ではなく、この世に生きる人に使って欲しい。」

「…では、御館様の次に、御守りします。」

「うん、Aはいい子だね。」

たったこれだけの会話でも、十分だった。
御館様とお話が出来るのなら。

それに、御館様は、何度も何度も口付けをしてくれる。
言葉で伝えられるより、愛されていると実感出来る。

周りの言葉なんか、気にもしなくていい程、私は御館様に愛されている。


「貴方が……貴方だけが、欲しい。」


私の言葉に、御館様が言葉を返すことは終ぞなかった。


それでも、私は、貴方を愛しています。

作者の間→←続き

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す