顔を見ろ ページ22
フレッドは睨んでいた。
Aの白く汚れた眼鏡のレンズを。
Aは見ていた。
フレッドの鼻筋を。
「......なぁに、フレッド？」
Aは未だフレッドの目を見れていなかった。
フレッドの鼻筋ばかり見て、側から見れば目を見ているのように装うことで精一杯だった。
恥ずかしさからくるものではない。
罪悪感との戦いからくるものであった。
鼻筋を見るのでさえギリギリだったので、Aはフレッドに声をかけた後、すぐ目を逸らした。
眼鏡を綺麗に拭く気にはなれなかった。
汚いレンズ越しだから今まで辛うじて見れていたのに、
視界が晴れてしまえば、それこそ鼻筋すら見れない。
Aにとって汚れた眼鏡は、昔も今も
Aから世界を遮断してくれる、唯一の生命線のようなものであった。
いつからだろう、眼鏡を拭かなくなったのは。
ふと目を細めてフレッドをチラッと見だ後、Aはぼうっと考えた。
「君さぁ....
なんかよからぬ事企んでんじゃないの？」
フレッドのその言葉に、Aは少しがっくりときた。
むしろその逆で、よからぬことを企んでないから
フレッドの顔を見れなかったのに。
まぁそんなところも好きだけど...とAは謎に惚れ直した。
「やぁね、私の頭の中はいつだってフレッドでいっぱいよ」
Aは言った。フレッドの方は見なかった。
今更だが、現在は魔法薬学の授業中なのだ。
だからフレッドの方を見ずに目線を落としたまま話すのは、何もおかしなことではなかった。
しかしフレッドにとっては、それも違和感でしかなかった。
いつもと真逆である。
フレッドの方ばかり見ていたAはすっかり目を落として、
Aを無視していたフレッドはAばかり見ている。
2人の後ろの席の生徒は、明日は槍でも降るのか...？と恐ろしくなった。
フレッドは汚れたレンズの隙間からAの目を見た。
横顔なので、いつもは隠れている瞳が顕になっている。
ヴァイオレットの瞳が、静かに教科書の文字を追っていく。
_____何だよ、いつもその目には俺しか映ってないくせに
フレッドは謎の怒りに襲われた。それと同時に困惑した。
自分は一体何考えてるんだと思った。
それもこれも全部コイツのせいだ。コイツが急におかしくなるから。
フレッドは手を伸ばしてAのレンズの汚れを拭って
顔を前に戻した。
Aがその横で見たこともない驚いた顔をしているのも知らずに。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 167人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちとせ(プロフ) - ちぢぶさん» レスにレス失礼します、ええー！ええー！すごくすごくすごく嬉しいです（ ; ; ）続編もとっても楽しみです☺︎ (2023年3月5日 11時) (
レス) @page50 id: eeb6bd2221 (このIDを非表示/違反報告)
ちぢぶ(プロフ) - ちとせさん» わ〜！ありがとうございます〜！！是非これからも3人の物語を見守っててくださいませ...！私もちとせさんの作品を愛読させて頂いてます...！！大好きです...ﾍﾍ...^^*こちらこそ応援してます！更新頑張ります！ (2023年3月5日 9時) (レス) id: a1d11d1f69 (このIDを非表示/違反報告)
ちとせ(プロフ) - コメント失礼します☺︎女の子とフレッドくんはもちろん、ジョージくんも可愛くてかっこよくて素敵です、みんな幸せになって〜〜の気持ちで読んでます（ ; ; ）これからも応援してます、すきです♡♡ (2023年3月4日 21時) (レス) @page48 id: eeb6bd2221 (このIDを非表示/違反報告)
ちぢぶ(プロフ) - rapierさん» わー！ありがとうございます...！嬉しいです...更新頑張ります！ (2023年2月25日 20時) (レス) id: a1d11d1f69 (このIDを非表示/違反報告)
rapier(プロフ) - めっちゃくちゃ好きです!応援してます‼︎ (2023年2月25日 19時) (レス) @page7 id: bda167fb53 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちぢぶ | 作成日時：2023年2月18日 0時
