脇役である者。 (ページ2)

今日:4 hit、昨日:2 hit、合計:19,818 hit

2.回避しなければページ2

・

「行ってきます」

そう誰もいない部屋に一言告げて、私はドアを閉めた。
廊下から上を見上げれば今日も江戸の空は晴天で。私の気分を高めてくれるようだった。
だが、その気分もすぐに引き締めなければならない。
仕事場に行く時も、油断大敵。
この地位だけは何を投げ出しても守らなければならないから。
そう心の中で気持ちを引き締めれば、廊下を歩きだす。

江戸の街は今日も活気づいていた。
八百屋のおじいさんは今日も声を張って野菜を売っていて、道端ではおばあさん達が集まって立ち話をしていて、公園には元気よく遊ぶ子供達。
何一つ変わらないいつもの普通の景色。
通り過ぎる人達は皆、平凡で普通の人達。
私は、不自然に思われぬよう周りを見渡していた。
これは私の朝の日課のようなもの。
これを毎日しなければ、面倒なことに巻き込まれかけない。

「......っと...噂をすれば」

そんな中、人々の中に一人目立つ銀髪の男を発見。
私はすぐに、自然と目立たぬよう遠回りにその男を回避した。
ちらりと覗いてみれば、こちらには気づいていない様子。
私は、ふぅ、と小さく息をつく。
正に今回避した男こそ、この人生における主人公(メイン)。私が一番、接触したくない男である。
その死んだ魚のような目と、容姿の一番特徴的な銀髪天然パーマは見飽きるほどだ。
特に月曜日は、毎週コンビニに買い物に来ているので要注意の日である。
ただでさえ、自分の仕事に行くだけでも接触しかねないのだから。
そしてこの人生で最もメインキャラ達がわんさかいる歌舞伎町は絶対に通るのは避けている。
あんなメインキャラ達の街に行くなんざ、この人生を終わらせに行かせるようなものだ。
それ以上に危険なのは歌舞伎町だけではない。
最も避けなければならないのは、今の現状と同じような「メインキャラの接触」こんなことになれば脇役人生が逆転してしまう。
だから、今のように遠回りに回避している。
面倒にも見えるが、これも自分のため。

とりあえず、今日も回避することができた。
私は、小さくガッツポーズをした。
今日も平和。平凡で普通な日。
それが毎日、この世を去るまで続くこと。

これこそ私が守り通さなければいけない脇役人生。