検索窓
今日:108 hit、昨日:40 hit、合計:2,315,659 hit

捌拾 ページ30

·




時透有一郎side






襖の向こうから声が聞こえた。




俺が気を失う直前に聞いた、あの、女の声だ。





襖が控えめにトントンと音を立てた後、ゆっくりと開かれる。




『……入っていいかな?』




有「……もう入ってんだろ」



『…はは、すまないね。


改めて、ここの主のAAだよ。宜しくね』




そう言って女は、自然に筋肉が弛むような微笑みを見せた。



…皮肉な程に、美しい。





有「…知ってる。



………それで、お前、俺に何したんだ」


『……ちょっとしたおまじないをかけただけさ』


有「呪いで腕が生えるとでも?」


『う〜ん…でも本当なんだよ』


有「お前は…"私の腕をあげる"と言った…



これは、お前の腕なのか?じゃあその、お前の肩から生えているものは?」




少し悩んだ後、女は小さく口を開く。




『……これは、お館様しか知らないんだけどね、私の言うおまじないは、人の怪我を自分に移す術のことなんだ』


有「…じゃあお前は、自分を犠牲にして俺を助けたって言いたいのか」


『……違うよ、犠牲にはしていない。死なない自信があったからね』

有「そりゃそうだよなッ!!千切れた腕も生えてくる化け物だもんなお前はッ!!!」



『…そうだね、私は化け物だ』




なおも柔和に微笑んだ顔で俺を見つめる。


それが一層腹立たしく感じてならなかった。




有「なんなんだよお前ッ!なんで笑ってんだよ!ムカつくんだよその顔!見てるだけで苛々する!!」





一瞬、笑顔が歪んだ。





『………久しぶりに言われたな、そんなこと』




有「…え…?…「ねぇ、うるさいんだけど」



…あ、無一郎…………」


無「…その人誰?……あ、答えなくていいよ、どうせ忘れるし」


『…こんにちは、無一郎くん』


無「ん、僕の事知ってるの?」


『うん、少し前に知り合ったんだよ。久しぶりだね』



無「…………うん……久しぶり」


有「………隠れとけって言ったろ…」


無「…君の言うことを聞く理由がないでしょ」



『まぁまぁ…




…さて、本題だが君達二人にはこれからこの屋敷で過ごしてもらいたい。嫌かもしれないけどね、少し我慢してくれるかい?』


無「………うん、わかった……よろしくね、A」




無一郎が、名前を呼んだ。



なんだよ、俺の名前も忘れてたくせに。





有「………あぁ、わかったよ…」






この日からずっと、Aの傷ついた様な表情が、頭から離れなかった。




·

捌拾壱→←漆拾玖



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (1346 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
3384人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 愛され
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

うさぎもち - 無一郎かわええ・・・ (8月5日 16時) (レス) @page47 id: 6ed501a3ba (このIDを非表示/違反報告)
冰輪(プロフ) - 無惨のママみがつおい……w (8月1日 0時) (レス) @page27 id: 3dfd0d46a5 (このIDを非表示/違反報告)
夜空(プロフ) - いつも楽しみにしてます最新頑張ってください応援しています (2021年5月21日 22時) (レス) id: 15c1247fea (このIDを非表示/違反報告)
りぽE - 錆兔好き…。 なんでこんなイケメンなん??錆兔と義勇さんに攻められたらやべぇな (2020年6月10日 16時) (レス) id: 15686f771a (このIDを非表示/違反報告)
桃綺薇(プロフ) - 鯖兎に惚れた…… (2020年4月20日 18時) (レス) id: 3e7a0f8c20 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:M2 | 作成日時:2020年1月18日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。