捌拾 ページ30
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時透有一郎side
襖の向こうから声が聞こえた。
俺が気を失う直前に聞いた、あの、女の声だ。
襖が控えめにトントンと音を立てた後、ゆっくりと開かれる。
『……入っていいかな?』
有「……もう入ってんだろ」
『…はは、すまないね。
改めて、ここの主のAAだよ。宜しくね』
そう言って女は、自然に筋肉が弛むような微笑みを見せた。
…皮肉な程に、美しい。
有「…知ってる。
………それで、お前、俺に何したんだ」
『……ちょっとしたおまじないをかけただけさ』
有「呪いで腕が生えるとでも?」
『う〜ん…でも本当なんだよ』
有「お前は…"私の腕をあげる"と言った…
これは、お前の腕なのか?じゃあその、お前の肩から生えているものは?」
少し悩んだ後、女は小さく口を開く。
『……これは、お館様しか知らないんだけどね、私の言うおまじないは、人の怪我を自分に移す術のことなんだ』
有「…じゃあお前は、自分を犠牲にして俺を助けたって言いたいのか」
『……違うよ、犠牲にはしていない。死なない自信があったからね』
有「そりゃそうだよなッ!!千切れた腕も生えてくる化け物だもんなお前はッ!!!」
『…そうだね、私は化け物だ』
なおも柔和に微笑んだ顔で俺を見つめる。
それが一層腹立たしく感じてならなかった。
有「なんなんだよお前ッ!なんで笑ってんだよ!ムカつくんだよその顔!見てるだけで苛々する!!」
一瞬、笑顔が歪んだ。
『………久しぶりに言われたな、そんなこと』
有「…え…?…「ねぇ、うるさいんだけど」
…あ、無一郎…………」
無「…その人誰?……あ、答えなくていいよ、どうせ忘れるし」
『…こんにちは、無一郎くん』
無「ん、僕の事知ってるの?」
『うん、少し前に知り合ったんだよ。久しぶりだね』
無「…………うん……久しぶり」
有「………隠れとけって言ったろ…」
無「…君の言うことを聞く理由がないでしょ」
『まぁまぁ…
…さて、本題だが君達二人にはこれからこの屋敷で過ごしてもらいたい。嫌かもしれないけどね、少し我慢してくれるかい?』
無「………うん、わかった……よろしくね、A」
無一郎が、名前を呼んだ。
なんだよ、俺の名前も忘れてたくせに。
有「………あぁ、わかったよ…」
この日からずっと、Aの傷ついた様な表情が、頭から離れなかった。
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うさぎもち - 無一郎かわええ・・・ (8月5日 16時) (レス) @page47 id: 6ed501a3ba (このIDを非表示/違反報告)
冰輪(プロフ) - 無惨のママみがつおい……w (8月1日 0時) (レス) @page27 id: 3dfd0d46a5 (このIDを非表示/違反報告)
夜空(プロフ) - いつも楽しみにしてます最新頑張ってください応援しています (2021年5月21日 22時) (レス) id: 15c1247fea (このIDを非表示/違反報告)
りぽE - 錆兔好き…。 なんでこんなイケメンなん??錆兔と義勇さんに攻められたらやべぇな (2020年6月10日 16時) (レス) id: 15686f771a (このIDを非表示/違反報告)
桃綺薇(プロフ) - 鯖兎に惚れた…… (2020年4月20日 18時) (レス) id: 3e7a0f8c20 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:M2 | 作成日時:2020年1月18日 22時