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___半年後。





珍しく夜に鍛錬を命じた芙蓉さんを不思議に思いながらも、いつも通りの内容をこなして太陽とともに山を登り、小屋へと向かっていた。


初めは邪魔だった木刀も、今や体の一部のようなものだ。




『…よし、到着っと…』






今日は風が強い。


伸びた髪がごうごうと風に煽られ、視界を邪魔する。


飛ばされそうになったお面を抑えながら、辺りを見回した。



今日は折角の満月だが、流れの速い雲によってその姿は見え隠れしている。






『………なんだろう、この感じ』




木々が急かすように葉を鳴らし続けていて、なんだか落ち着かない。



夜に鍛錬をさせた理由を聞こうと口に言葉を用意し、同時に扉を開けた。









部屋に充満した、血の匂い。




『……ぁ……え?……』




腹に大穴を開けた芙蓉さんが、床に倒れていた。




『っ、芙蓉さんッ!!!』


芙「……あぁ、A…おかえり」


『喋るなッ!今止血を、!』


芙「…聞け、A。私はもう助からないよ」


『ッ黙って!』


芙「A!!」


『…っ…………』



芙「…鬼殺隊が来た。柱だ。


彼は私を殺せなかった。私も彼を、殺せなかった。




隠が居たんでね、柱は気絶させて、その隠に任せたよ。

この傷も塞がると思っていたが…参ったな、どうも無理らしい」


『もしかして、藤のお香のせいで…?』


芙「はは、どうやら思っていたよりも身体に毒だったみたいだ」


『わっ、私を、食べれば…私、稀血だから……』




そう言って、直ぐに後悔した。


芙蓉さんが悲しそうに目を細めたのだ。




『……ごめん、なさい…』


芙「…A、そこの木刀を拾いなさい。


私の頼み事、覚えているね?」



『………………』



芙「何もせずとも、このまま私は朽ちる。

その前に、Aが、私の頸を斬ってくれ」






.








________









こんな時にも、彼は"笑顔が見たい"と言う。




"私の好きな、君の笑顔を見せてくれ"と。







酷い人だ。









開け放たれた扉から陽の光が射し込む。




思えば、彼と陽を浴びたのはこれが初めてだ。






…日の下の彼は、こんなにも美しかったのか。









私は笑って、木刀を大きく振りかぶった。









.

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Kさん - なんかこの作品のおかげで小芭内のこと好きになったわ.....この作品好きぃぃ!! (6月14日 20時) (レス) @page36 id: 91d89c4fce (このIDを非表示/違反報告)
廣岡唯 - 面白い続きが観たい… (2022年11月5日 11時) (レス) @page14 id: 4e6dbece94 (このIDを非表示/違反報告)
カド松(プロフ) - 彼女、気づいたら痣だらけになってそう (2020年11月14日 19時) (レス) id: 8d052b9284 (このIDを非表示/違反報告)
咲拉(プロフ) - お返事ありがとございます!M2様の文は個性豊かで面白い所も皆様に刺さるポイントだと思っています。これからもM2様らしいコミカルさも折り込まれた作風を楽しみにしています!真摯に対応して頂いてありがとございました。今も大変かと思いますが、体調気を付けて下さい。 (2020年4月21日 13時) (レス) id: 94dbf7702a (このIDを非表示/違反報告)
M2(プロフ) - 咲拉さん» 読み返してみると結構拙い文が多いですね…申し訳ないです。今度リメイクしてみようと思います!有難く参考にさせていただきますね! (2020年4月21日 0時) (レス) id: ca371dd3e9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:M2 | 作成日時:2020年1月11日 13時

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