肆拾弐 ページ42
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獪岳side
今Aが罵倒している三人は、上司とも呼びたくねぇクソ共だ。
一年前に最終選別に合格してから、次々と階級を上げていった俺は、妬みの対象になった。
階級は同じだが歴が長いといって偉そうに指図してくる彼奴らに、俺は仕方なく従っていた。
なのに、恨みつらみは止むことがなかった。
初めは悪口も無視していた。悲しくともなんともなかった。
だが、壱ノ型が使えないことを話の種に陰口は増え、俺の苛立ちは積もる一方だった。
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獪「……………A……」
無意識に呟いた彼女の名前に、縞柄の羽織の男が振り返る。
伊「………お前か、獪岳というのは」
獪「…だったらなんだ」
伊「何故姉様が、お前の為にああやって人を叱るんだ」
獪「…知らねぇよ」
伊「…………俺はお前が嫌いだ」
獪「…あぁそうかよ」
Aの話が終わると、クソ三人は舌打ちをしてその場を去った。
伊「………姉様、早く帰るぞ」
『あぁ、置いて行ってしまってすまなかったね、小芭内。
……あぁ、獪岳くん。
時間を無駄に過ごしただけの奴らの言うことなど、ただの負け犬の遠吠えだ。彼奴らが君を悪く言うほど、君は彼奴らを負かしたことになる。彼奴らとの格の差は広がっていく。
胸を張れ。君は強い』
くしゃくしゃと俺の頭を撫で、その場を立ち去っていく後ろ姿を呆然と眺める。
去り際に、縞柄の男が俺を睨んだ。
伊「(…悔しい。姉様が初めて見せた怒りが、俺ではなく此奴の為であることが悔しい……)
…やはり俺は、お前が嫌いだ」
獪「……………」
あぁ、俺もお前が嫌いだよ。
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獪「……なぁ、先生」
桑「…………獪岳。久しぶりじゃの」
その日以来、陰口は激減した。
あのクソ共の姿は一度も見ていない。
死んだか、死んでないかなんてどうでもいい。
獪「…もう一度俺に、壱ノ型を教えてくれ」
桑「…ほぉ、何かあったか?」
獪「……別に、なんもねぇよ。……ただ、」
ただ、俺は彼女の為に強くなると決めた。
彼女の期待に応えたいと思った。
彼女を、守りたいと思った。
獪「…ただ、強くなる目的ができただけだ」
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Kさん - なんかこの作品のおかげで小芭内のこと好きになったわ.....この作品好きぃぃ!! (6月14日 20時) (レス) @page36 id: 91d89c4fce (このIDを非表示/違反報告)
廣岡唯 - 面白い続きが観たい… (2022年11月5日 11時) (レス) @page14 id: 4e6dbece94 (このIDを非表示/違反報告)
カド松(プロフ) - 彼女、気づいたら痣だらけになってそう (2020年11月14日 19時) (レス) id: 8d052b9284 (このIDを非表示/違反報告)
咲拉(プロフ) - お返事ありがとございます!M2様の文は個性豊かで面白い所も皆様に刺さるポイントだと思っています。これからもM2様らしいコミカルさも折り込まれた作風を楽しみにしています!真摯に対応して頂いてありがとございました。今も大変かと思いますが、体調気を付けて下さい。 (2020年4月21日 13時) (レス) id: 94dbf7702a (このIDを非表示/違反報告)
M2(プロフ) - 咲拉さん» 読み返してみると結構拙い文が多いですね…申し訳ないです。今度リメイクしてみようと思います!有難く参考にさせていただきますね! (2020年4月21日 0時) (レス) id: ca371dd3e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:M2 | 作成日時:2020年1月11日 13時