橄欖の側にて咲く青薔薇の密かな望み。そのヨン

ヒャクロクジュウ話 ページ15

その情報を知るとなると、彼女はあの赤いアーチャーのマスターとなる。

にこりと笑う美少女に、どうするかと考えた。

頭脳戦はそこまで得意ではない。

そういうことは兄やウェイバーさんの方が得意だ。

あくまで私は二人の背中を見て、二人ならどうするかと考えて、真似事をするように自分もその行動をする。

美少女の目から逃れるように三人がいる方の窓を見れば、外の景色は街中ではなく橋と海。

どうやらかなり走っているらしい。

「……」
「無言は肯定と取るわよ？」
「凛、その辺りでよろしいのではないですか？ Aにも事情があります」

今まで静観していたセイバーが、そう言う。

目を瞬き、彼女を見れば目が合った。

「A、貴女が"誰か"の指示の元、私達の前に現れたのかはこの際詳しく追及いたしません」
「！」
「ちょっとセイバー」
「ですが代わりに貴女も彼も、今日は私達に何もしないと言ってくださいますか？ もちろん此方も、少なくとも私も士郎も貴女達には手を出しません」
「セイバー！」

きっとセイバーはキャスターの指示の元、私がここにいることに気付いている。

それを踏まえてのセイバーは私に提案してくる、というのか。

ーーどうするマスター。乗るも乗らないもあんたに任せる。

バスの揺れを感じながらも考えた。

セイバーと美少女とシロウ君が討論している。

何故私をそこまで擁護するのか。

彼女が私を助ける理由は、いや一つだけあった。

何日か前の晩に私は二人を助けた。

「セイバー、私は」

言葉を紡ごうとして、窓に写る車内を見て、気付いた。

そう言えば、どうしてこのバスには私達と運転手以外乗車していないのだろうか。

車内はがらんとしている。

そして、何故か乗車した時にいたはずの運転手が運転席にはいなかった。

誰もいない運転席なのに独りでにハンドルが動いている。

明らかに可笑しかった。

「っA！」

バスが大きく揺れ、車体が右側へと倒れる。

咄嗟にアサシンが霊体化を解いて私を庇ってくれたらしい。

気が付けば窓を床に、先程まで私が座っていた座席が壁になってアサシンに抱えられていた。

「怪我はないかマスター」
「私は大丈夫です。っシロウ君とセイバーと美少女ちゃんは!?」
「落ち着けマスター、三人共無事だ」

後ろを見るアサシンに、倣うように彼の肩越しにそちらを見れば三人共窓を下にしながらも怪我はなさそうだった。

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