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「ぁ、ぉにいちゃ、」
ぱちぱちと瞬きしたお兄ちゃんと目が合った。
「んっ、のっ…」
まだ本調子やないからか、あまり声は出えへんみたい。
ベッドの近くにある椅子に座って、お兄ちゃんの方を向けば、嬉しそうにニコニコと笑った。
「あんな、…お兄ちゃん、今まで、ホンマにごめんなさい、」
驚いたように目をぱちぱちとするお兄ちゃん。
なんの事？とでも言うように首を傾げる。
「にぃちゃんに、酷いこと沢山言ってもうたっ、」
そう言えば、相変わらずニコニコと笑うお兄ちゃん。
「きょ、…はじ、めて、け…か、した、な、？」
“今日、初めて喧嘩したな？”
その言葉に嫌味は含まれていなかった。
それを証拠にお兄ちゃんは目を細めて、嬉しそうにしている。
お兄ちゃんの尊敬出来るところは、そういう所や。
お兄ちゃんのそういう所は昔から変わってへんくて。
「っ、…ごめん、ごめんなっ、…」
嬉しそうに笑うお兄ちゃんに涙が止まらんくて。
伸びてきた細い手にゆっくりと頭を撫でられて、益々涙は止まらない。
「んっ、…」
瞬きをしたお兄ちゃんの瞳から一粒の涙が零れる。
「…の、ちゃ、…ま、た、…」
“帰ってきてな？”
ぽろぽろ、と大の大人が涙を流し合って、帰省の約束をする。
「んっ、すぐ帰るからっ、…！」
子どもの時みたいに、ちっちゃい声で指切りげんまんまでして。
ふふっと笑った俺らの間に蟠りなんて存在しなかった。
Fin.
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作者名：紗彩 | 作成日時：2022年4月20日 17時
