序章 ページ1
雲がゆっくりと青空を流れる午後、
魔法学校の黒い制服を身にまとった少女が、
友人達と作り上げた『記憶の森』で、
少女の身の丈よりも長い杖を両手で掲げた。
次の瞬間、少女の足元に魔方陣が展開され、周囲の木々がざわめきだす。
「転移 はじまりのミセ」
そう呟くと光と共に少女の体は森から消えた。
_日本_
空は、生憎の雨模様。
その空を穿つように空間が歪み、少女が姿を現した。
「来たわね」
艶がかった黒髪を高い位置で括った女性が、目の前に立っていた。少女は問うた、
「あなたが次元の魔女ですか?」
「そうとも呼ばれているわね」
「叶えて欲しい願いがあります」
「さあ、上がって」
館に案内されると、一人の少年がお茶を淹れてくれた。
「彼は、ウチのバイト君なの」
少女が少年のことを視線で追いつずけていたら次元の魔女がそう答えた。
「私は、壱原侑子。あなたの名前は」
「......フィリアっていいます」
「真名は名乗らないのね」
「名乗った方がいいですか?」
「いいのよ、知ってるから」
侑子はそう言うと、目の前のティーカップを手に取り、一口飲んでソーサーに戻した。
「あなたの願いは何?」
「私の願いは、私達三人が幸せに暮らせる未来を創る事です。だから、次元を渡る
「その願いは、あなたの持つ最も価値のあるものでも払いきれるものでわないわ」
「では、私の願いは叶えられないと」
そう返したフィリアに侑子は不敵に笑った。
「そんなことはないわ。......けど、条件があるだけよ」
「その条件とは」
「これからここを訪れてくる者達と旅をして欲しいの」
「なぜ、そうだとわかるのですか」
「......そう決められてるからよ」
意味深に侑子は答えた。
フィリアは、じっと侑子の目を見つめ、
その意味を悟ろうとした。
だが、侑子の目からその意味を知ることはできなかった。
フィリアは、ため息をつき侑子の目を見据えて
「では、私の対価は」
「......その銀時計」
侑子はフィリアの胸ポケットに入っている銀の懐中時計を指した。
フィリアは両手でその銀時計を握りしめた。
「......これでないとダメですか」
「ええ、対価はその者の最も価値のあるものでないと」
このとき、フィリアは思い出していた。
この銀時計をくれた友人のことを
口喧嘩をしていた黒髪の少年と二人に振り回されていた、亜麻色の髪の少年のことを
そして、懐かしい思い出の日々のことを
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作者名:浅葱由希 | 作成日時:2016年3月20日 12時