8.あいにおぼれる ページ10
*
ふわり。暖かい何かに包まれて、深海に沈んでいたような意識が徐々に覚醒していくのが分かる。
けれど私はその睡眠と覚醒の間のまどろみと永遠に戯れていたくて。まるで幼い子供のように目覚めたくないと駄々を捏ねてまた深海へと意識を投げ出した。
このまま朝も夜も来なければ良いのに。なんて。
そうすれば私が彼の愛に悩むことも、【いもうと】であることにも苦しむ必要はないのだ。
嗚呼。
「こいびとに、なりたい。」
*
瞬間。ふわふわとした意識は深海から引きずり出され。まどろみには永遠の別れを告げられる。
びゅんびゅん変わる世界に目を回す暇はなかった。
気が付けば私は両手首をベッドに押し付けられていて。氷のような冷たい瞳をして私を見下ろす彼と目が合った。
そうしてから、何かやってしまったのだと妙に冷静さの残る頭でそう考察をする。彼がこんなにも冷たい瞳をするのは決まって私が【いもうと】でいることに失敗したときだから。
ぎしり。手首が嫌な音を立てる。
「どうして。」
「どうして君は、私の【いもうと】でいてくれないの。」
心臓を鷲掴みにされるような感覚に思わず小さな悲鳴が溢れた。寒くもないのにガタガタと身体が震えてポロポロと溢れ出る涙が私の頰を伝ってシーツに染み込んでいく。
両手首の痛みを訴える余裕もない。私はただただ恐怖に身体を支配されるのだった。
やがて彼はそんな私をじっと見つめてから、もういいや、と。
その言葉の真意が分からず困惑の声が漏れる。
もしかして私はもう彼の【いもうと】でいなくて良いのだろうか。
彼は【私】を愛してくれるのだろうか。
そんな淡い期待が高まり再び彼と目が合った時だった。
彼は打って変わりふわりと優しく微笑むと、酷く緩慢な動作で私の首へ手を伸ばす。
まさか。まさかまさかまさか!
「【いもうと】の永遠を捨てると言うのなら、こうしてしまおうか。」
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ミレー - 完結とは悲しいです゚。(p>∧<q)。゚゚ 太宰治様はいもうとを手にかけたのですか 太宰治様のヤンデレハンパないです(*´∀`*) (2019年9月19日 20時) (携帯から) (レス) id: a496965e6a (このIDを非表示/違反報告)
ミレー - あっぷるさん» お返事ありがとうございます(≧∇≦) 病んだ太宰治様大好きです(*´∀`*) これからも病んだ太宰治を出して下さい(*´∀`)ノ (2019年9月19日 17時) (携帯から) (レス) id: a496965e6a (このIDを非表示/違反報告)
あっぷる(プロフ) - ミレーさん» コメントありがとうございます!ご満足いただけたようで幸いです!まだまだな私ですが、どうぞお付き合いくださいませ(^ ^) (2019年9月18日 21時) (レス) id: 9e41ced277 (このIDを非表示/違反報告)
ミレー - 初めてこの作品を見ましたが(*´∀`)ノ 最高です(*´∀`*) 続き楽しみに待ってます(o>ω<o) (2019年9月18日 19時) (携帯から) (レス) id: a496965e6a (このIDを非表示/違反報告)
あっぷる(プロフ) - 明蛍さん» コメントありがとうございます!そう言っていただきますと本当に嬉しいです(^ ^) ぼちぼち更新していきますのでどうぞお付き合いください m(_ _)m (2019年9月17日 13時) (レス) id: 9e41ced277 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あっぷる | 作成日時:2019年9月16日 18時