いもうと。 【太宰治】

７．ほんね ページ9

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incest(インセスト)、またの名を【近親愛】。

血縁者に恋愛感情を抱いてしまう一種の異常性癖である。





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ぱたり。読んでいた本を閉じる。

そうしてから背表紙を指でなぞりながら先程頭に入れた内容を反復する。いんせすと。きんしんあい。


これは彼に当てはまるのだろうか。


合っているような気もすれば違うような気もする。彼は【いもうと】である私を愛しているけれど、私は彼の本当の妹ではないから。



＿＿そこまで考えて、私は自分がとても虚しい感情に支配されていることにようやく気が付いた。



ただ【私】を愛してほしい。【いもうと】ではない【私】を見てほしい。



上手く言葉で表現出来なかった。どうして今更。この歪な関係を受け入れたあの日から、私は彼の全てを肯定すると決めた筈なのに。


胸が苦しい。無意識に強く胸を押さえた。


きっとこのまま彼の望む【いもうと】でいれば全ては上手くいくだろう。彼が私を愛しているのはよく知っているし、私もまた彼を愛している。

だからこれが正解。こうして彼のかわいい【いもうと】でいることが。


頭では理解している。けれど私の胸を埋め尽くす溢れんばかりの彼への想いは納得がいかないと騒ぎ出して。＿＿嗚呼。





(ふつうの こいびとに なれたのなら。)





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