第26話◆ ページ27
「研磨の友達さん」
「……蒼川です」
友達、という台詞は聴き慣れない響きで、どうにもこそばゆい。
名字だけを名乗りそちらで呼ぶように誘導すれば、黒尾さんは食えない笑顔を浮かべた。
「どう? マネージャーやる気になった?」
「あ、えっと、それは……」
急な展開に脳がついて行かず、濁した語尾が、冷や汗に混じって溶けていく。
ちらりとアップルパイさん……改め、研磨さんの横顔に目をやると、そこに浮かんでいるのは微かな輝き。
子どもが新しいおもちゃを手に入れた時のような、無邪気な輝きをむげにできるほどの度胸を、あいにく私は持ち合わせていなかった。
「とりあえず、体験だけ……します」
「了解。じゃあ、俺2人に伝えてくるから……研磨」
「何?」
「案内してやって」
「ん」
小さく頷いた研磨くんは、黒尾さんの背中を見送った後、古ぼけた体育館の扉に両手をかけた。
年季の入った重そうな音を立て、左右に開いていく灰色の向こうから、こちら側に差しかけるのは、熱い声と眩いばかりの光。
同じ高校生だというのに、このエネルギーの違いはなんなのだろうか。
「高校生……すごい」
「何それ。ソラノさんも高校生でしょ」
「いや、なんか……」
ぷっと吹き出した研磨くんの顔は、この前会った時よりも幼くて、なんとなく心臓のあたりがムズムズする。
ちょっとだけ……楽しそうかもしれない。
胸の中で弾けた小さな期待は、いつのまにか戻ってきた黒尾さんとその他2名の声で、確信へと変わった。
「ようこそ。音駒高校バレー部へ」
続く お気に入り登録で更新チェックしよう!
最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している
←第25話◇
208人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
青砥ルラ - 4.16 (2020年4月19日 14時) (レス) id: 3630771c88 (このIDを非表示/違反報告)
あべかわもち(プロフ) - 名無しですがなにか?さん» はい、そうなってます! (2018年4月16日 6時) (レス) id: 9f7db0fc1d (このIDを非表示/違反報告)
名無しですがなにか? - 白い四角が、青砥ルラさんですよね? (2018年3月23日 16時) (レス) id: 3b500904fe (このIDを非表示/違反報告)
青砥ルラ(プロフ) - なーさん» はい!ゼヒともお願いしたいです! (2018年3月23日 11時) (レス) id: 4eb8e6777a (このIDを非表示/違反報告)
なー(プロフ) - 青砥ルラさん» ありがとうございます…!また機会があったらお描きさせてください! (2018年3月23日 11時) (レス) id: 70117f1d7d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あべかわもち あおと x他1人 | 作成日時:2018年3月20日 18時