第24話◆ ページ25
バスケのタイムアップと同じ音が体育館を鋭く駆け抜けた。
白い枠内にいた人達が両側へとはけていったから、多分試合が終わったのだろう。
最近右肩下がりの視力の代わりに、1点1点カウントしていた指を見ると、アップルパイさんのチームの得点の方が多かった。
「……やった」
小さく漏らした言葉に、自分自身が一番驚いている。
数えたままのパーになっている両手をそっと口元に当て、小さなつぶやきを隠すように守った。
壁の時計を見れば、長い針と短い針がちょうど180に開いている。
……名残惜しい気もするけれど、ここら辺で出ておかなければ電車に乗り遅れてしまう。
そっと立ち上がったはずなのに、古ぼけた赤いベンチはギギッと嫌な音を立てて私を立ち上がらせる。
「……ソラノさん?」
「えっと、はい」
怪訝そうに眉をひそめたアップルパイさんの視線を受け、さっきまで乗り出していた体を出来る限り縮めて首をすくめた。
見られるのがあまり好きではないのは、私も一緒だ。
押し切られる形とはいえ、最後まで見ていたのは事実だし、ついつい楽しんでしまった。
ボソボソとごめんなさい、と呟くと動いていた選手の熱気の中に溶けるようにして紛れこんでいく。
はぁ、とため息をついたように見えたアップルパイさんが私に問いかけた。
「楽しかった?」
「う、うん。楽しくなかったの?」
「別に、普通かな」
その返事がいかにもアップルパイさんらしくて、思わず微笑んでしまったのは、私だけの秘密だ。
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青砥ルラ - 4.16 (2020年4月19日 14時) (レス) id: 3630771c88 (このIDを非表示/違反報告)
あべかわもち(プロフ) - 名無しですがなにか?さん» はい、そうなってます! (2018年4月16日 6時) (レス) id: 9f7db0fc1d (このIDを非表示/違反報告)
名無しですがなにか? - 白い四角が、青砥ルラさんですよね? (2018年3月23日 16時) (レス) id: 3b500904fe (このIDを非表示/違反報告)
青砥ルラ(プロフ) - なーさん» はい!ゼヒともお願いしたいです! (2018年3月23日 11時) (レス) id: 4eb8e6777a (このIDを非表示/違反報告)
なー(プロフ) - 青砥ルラさん» ありがとうございます…!また機会があったらお描きさせてください! (2018年3月23日 11時) (レス) id: 70117f1d7d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あべかわもち あおと x他1人 | 作成日時:2018年3月20日 18時