『穏やかに緩やかに』 ページ7
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右を見ても左を見ても魔法少女しかいないこの学校は学年があるわけでなく、年齢混合で授業が行われている。そのため年上の魔法少女年下の魔法少女に教えたりする光景は日常茶飯事だ。
「リゲル、このやくひんはどうすればいい？」
クイクイと袖を引くのは、師弟関係でもあるアルタイルことアル君。
物静かで無口で、冷静沈着な性格な子。
水色のつり目に薄紫の髪を高い位置で結い上げ、黄色のフリルがたっぷりのドレスに頭にオレンジのリボン。翼と天使の輪っか、おまけに小柄な体格でまさにお人形さんと言われる容姿だ。
しかし、彼は男である。
「それはこの薬品と合わせて使うんだ。主に治癒力を高める作用があるの。でも使いすぎると副作用で免疫力を低下させてしまうから、緊急時以外は多量に使用は厳禁だよ」
「なるほど、これはたりょうきんし…」
ふむふむと考える仕草に思わず撫でたい欲求が疼く。だが流石に子供扱いするのはダメか…
欲求を抑えていると授業終了のベルが鳴る。各々が教室を出たり話し始める中、ふと彼を見て思い出したのだ。
「そうだ、アル君」
「？」
「ふふっ、今日は星型のタルトだよー」
「！！」
バケットからお菓子を取り出すとキラッとアル君の目が輝いたのが分かった。星が好きなのか時折こうした星型のお菓子を作れば彼は嬉しそうに目を輝かせるのだ。
一口サイズののタルトの表面には星型の穴を開け、中身は自家製のジャムを敷き詰めてある。
「たくさんある……どれでもいいのか？」
「もちろん、勉強頑張ったご褒美みたいなものだし」
「じゃ、じゃあ…」
おそるおそる手に取ったのはオレンジのジャムが入ったタルト。なるほどオレンジ色だから星の色に近いのだろう。パクリと小さな口で頬張りもぐもぐと口を動かす姿は小動物のようだ。
「…！！」
『美味しい…！！』と表す様に小さくパタパタと足が揺れている。やはりお菓子は誰かに美味しく食べてもらうのが一番だ。
《＿姉ちゃん美味い！！》
脳裏に、今はもうこの世にいない弟の姿がよぎる。
バケモノに成り果てこの手で殺した弟。
そういえば、あの子もタルトが好きだった
「リゲル？どうした、ぐあいわるいのか？」
ボゥっと遠くを見ている私を不思議がってアル君が首を傾げる。我に返ってなんでもないと首を振った。
………もう数年前の事なのに、まだ引き摺っているのか…
我ながら女々しい奴だ
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作者名：夜月 | 作成日時：2017年9月11日 22時
