38.手 ページ38
階段のど真ん中で行われた会話が思いの外目線を集めていたので、私は昼神に抱えられたまま、2階席の人気のない長椅子の所まで移動した。
ぶっちゃけ恥ずかしかったので下ろして欲しかったのだが、昼神は全く聞いてくれなかった。
「………もういいでしょ。降ろして。」
「………ヤダって言ったら怒る?俺のこと嫌いになる?」
「…………怒るけど、嫌いにはならない。」
「じゃあこのままで。」
「調子乗んじゃねぇ」
お前は私を恥ずか死させる気か。
割と本気で怒ったら、昼神は渋々降ろしてくれた。
私はそのまま長椅子に座り、昼神もかなり間を狭めて隣に座ってきた。私達の肩が触れ合う。
「今日はありがとうね。あんな凄いことまでやって貰っちゃって。」
「別に。あれで大分気にせずやれたでしょ。」
「うん。みんなもびっくりしてた。うるさい筈なのに全く気にならなかったって。」
昼神は笑いながらそう言って、私の手に自分の手を絡めてくる。
まだ付き合ってもないのにこういうことするのはあまり好きでは無いけれど、断るのも嫌だったので何も言わずにそのままにしておく。
昼神の手は、試合後の筈なのに割と乾いていて、さっきまで道具を触っていた私の手の方が汚いとわかってしまう。
やっぱりそれは嫌なので、昼神の手から逃れようとすると、それに気付いた昼神はさらに強く握ってきた。
「………いや?」
多分、手を繋ぐのが、という意味だと思う。
それを尋ねる昼神の声はちょっと寂しそうで、心にかなりずぎゅんと来た。
「……私、今、かなり手汚いから。」
「気にしないって。頑張ってくれてたんだからそうなって当たり前でしょ。……それとも、俺に手が汚いって思われるの、嫌だった?」
「………っ」
図星を付かれて、思わず目線を露骨に逸らしてしまう。
なにやってんだ、わたし。。
そんなことしたら、貴方を意識してますって意味にも捉えられる。
いや、間違ってはいない。間違ってはいないけど、まだ夏休み最終日まで時間あるのに、ここで昼神にスイッチ入っちゃったら
「………俺の口説きがちょっとは効いてきた感じかな。」
「…………」
「大丈夫。まだ待つよ。
残り3週間で、ちゃんと覚悟決めてきてね?」
優しくて、ゆったりしたペースで紡がれる言葉。
子守唄みたいに、落ち着く声。
私はその言葉の意味を正確に捉え、長いようでいて短い残りの期間を思い、頷くのだった。
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早苗くん - 36話めっちゃすきです。「海を渡る鴎に相応しい、海の男の音が響き渡る。」のところカッコよすぎです。 (6月10日 12時) (レス) @page36 id: 5215e79380 (このIDを非表示/違反報告)
葵坂(プロフ) - あぽ様です。さん» ですよね!わかってるんですよ「現実的じゃないなぁ」「ちょっとキャラ崩壊かなぁ」とは!しかし!私の解釈で書いてまいりますので!応援してくださる方はそのままで、ダメな方はゆっくり回れ右をして頂く!これが葵坂流でございます!コメントありがとうございました! (5月3日 7時) (レス) id: ea5ee97200 (このIDを非表示/違反報告)
葵坂(プロフ) - ぺpopo。さん» ありがとうございます!!え、後味スッキリでした?!そう思っていただけたなら作者冥利に着きます!!夢主の性格は、作者どうしてもThe.女の子っていう子が書けない中でどうやって恋愛小説っぽい子を書くか思案した結果あぁなりました!これからもよろしく願いします! (5月3日 7時) (レス) id: ea5ee97200 (このIDを非表示/違反報告)
葵坂(プロフ) - FLOWERさん» たくさんのコメントありがとうございまする!やはりあそこですか!!作者も結構頑張ってキュンを追求したのですけど、やっぱり展開が早すぎたかなぁと反省しておりました。そんなところにFLOWER様のコメントを頂きまして、大変心がほっとしております!次も乞うご期待! (5月3日 7時) (レス) id: ea5ee97200 (このIDを非表示/違反報告)
あぽ様です。 - 告白現場に居合わせる、ひどい振り方とか夢あるあるだね (5月3日 0時) (レス) @page3 id: a540b2ed94 (このIDを非表示/違反報告)
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