困り事57つ目 ページ10
勝手に溢れる涙に錯乱しながらもどこか冷静な頭は、何故だかこれまでの人生をまるで走馬灯のように思い出させた。
幼少期から高校までの実家で暮らした記憶、高校を卒業してから警察学校に入校し、今までの記憶。警察学校に入校して、これまで心にしこりとして残っていたもの。
──彼らと出逢ってからずっと、努めて考えないようにしていたことがある。
両親は、両親の親戚たちは、罪を犯しているのではないか。
信じたくなかったのだ。両親は違うと思っていた。だってぼくは愛されている筈だから。あれは愛故の行いで、躾であるから。
両親は神様の様に崇める存在で、神様の啓示の如く全てを聞き、全て享受するべきだ。勿論疑う事も許されない。否、ぼくは疑った事など無かったのだ。一度も。一度だって。神に、両親に誓って。
昔、誰かが両親を疑った事でぼくの両親への愛情が疑われたことがある。
どうしてだと思った。知らない。知らない。そんな筈は無い。ぼくは両親を尊敬しているのだ。崇拝しているのだ。愛しているのだ。彼らの為に命を擲つ事が出来る程愛している。愛して、いるのだ。
────本当に？
喉が締まり、息が詰まる。ああ、何て事を考えているんだぼくは。有り得ない。有り得ないんだ、こんなこと。両親に限って。
でも友に名前を呼ばれる時、頭を撫でられる時、食事を共にする時、ぼくはいつも胸がぽかぽかして温かかった。
それは実家では感じたことがない温もりだった。これをうれしいと言うのだと、しあわせと言うのだと、教えてもらった。それらは全て親不孝者で出来損ないで近い内に死に行くぼくには不要と言われたものだった。
ぼくだけが知らなかった。ぼくだけが。
今まで苦しくなかったと言えば嘘になる。泣き出したくなった事も逃げ出したくなった事もある。でも耐えられたのは全て悪い事では無いと信じていたから。両親を愛していたから。…認めてしまえば、駄目になると感じたから。
松田さんが場を収めてくれて、皆が帰った後。1人となった病室で、ふと唐突にあるアイデアが浮かんだ。昔のぼくなら考えもしない有り得ない発想。でも頭から離れない。
これを口に出すのは、尊敬し、崇拝し、愛している両親を裏切る事になる。でもこれしかない。
「もしもぼくがみんなに、彼らに助けを求めたなら、そうしたらぼくは──生きていても良いと許されるんじゃないだろうか？」
それが両親への愛を示す手段だとしても、ぼくは彼らと、生きていきたい。
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きゃすみ(プロフ) - めちゃくちゃ泣きました！！素敵な作品を作ってくださりありがとうございます！！ (2023年3月10日 14時) (
レス) id: e6f2b24efc (このIDを非表示/違反報告)
セイカ - 更新したんですね！相変わらずめっちゃ良かったです！ (2022年12月23日 12時) (レス) @page15 id: bb7bb5003e (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 更新お疲れ様です！ (2022年12月22日 21時) (レス) @page15 id: 75972ecbb8 (このIDを非表示/違反報告)
ライキ - うわぁぁぁぁぁぁん！！！結くんーー！！！！！仲間たちを頼ってくれてありがどうぅぅぅ！！！！ (2022年12月7日 18時) (レス) id: c3cdfe919e (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - めっちゃ好きな作品、、、！最高、、、！これからも無理せずに更新頑張って下さい！応援してます！ (2022年11月24日 19時) (レス) @page12 id: f9af42ef58 (このIDを非表示/違反報告)
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