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困り事55つ目 ページ8

両足の骨折で殆ど動かせず衰えた筋肉を取り戻すためのリハビリが漸く始まった。暫く続いていた入院生活にようやく終わりが見えてきて、浮き足立つ(まだ立てる程筋肉は回復していないが)。

足を固定していたギプスを外してもらってからは、立つ練習から始まった。初日は本当に筋肉が衰えきっていて、情けないことに掴まり立ちでようよう立つことができる程度だった。

参ったな。早く復帰しないとまた両親にどやされてしまう。病気休暇ということで給与がいつもより少なく、先日給与明細を見た母にこれでもかと怒鳴られたばかりなのだ。本当にいけない。事故に遭い、入院し、立派なベッドで寝ている。両親が許してくれる筈もなく、常に胸が痛い状態だ。

そうしてリハビリが続き、明日からは走行訓練をしようと告げられたその日。忙しかったのか最近顔を出していなかった松田さんたちが来てくれた。

「よう。調子はどうだ?」

「良好です。明日からは走行訓練に入ることになったんですよ。このまま順調にリハビリが進めばもうすぐ退院できると思います」

「そうか。頑張ってるんだな」

「はい!」

病室に入って来た時から皆の様子がどこかおかしいことには気付いたが、特に触れることなく表面上は和やかに会話が続く。それが途切れたのは、堅い表情の班長が「結」と声を上げた瞬間だ。それまでの和やかな会話が嘘のようにシン、と病室が静まり返る。

「…警学時代、お前の顔付近に手を伸ばした時、最初の頃は目を瞑っていたよな。あれは何故だ?」

「…手を伸ばした時、どうして目を瞑るか…?目を…えっと、あれ…なんででしょう…?」

あれは躾で、ぼくを正しい人間にするために両親が“してくれた”ことだ。それを享受することでぼくは立派な人間になることができ、それを“していただいた”孝行として、感謝として、ぼくは殉職する。そのためにこれまで生きてきた。

警察学校で出会った彼らはぼくを躾しないで友人として接してくれて、ぼくを可愛がってくれて。だからぼくはそんな皆が大好きで。

優しく撫でてくれる手も気遣ってくれる言葉も全て両親から与えられるソレと違っていて、ぼくはそれがとても好き、で…。…?

「ぇ、あ…そんな…」

「結?」

「ちが、ちがう、だって、あれは正しいことで。ぼくの出来が悪いからやってくれていることで。だから、あれは、ちがう。ああしてもらわないとぼくは立派な人間になれないから。いやなことじゃない。ちがうってば、ちがう」

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きゃすみ(プロフ) - めちゃくちゃ泣きました!!素敵な作品を作ってくださりありがとうございます!! (2023年3月10日 14時) (レス) id: e6f2b24efc (このIDを非表示/違反報告)
セイカ - 更新したんですね!相変わらずめっちゃ良かったです! (2022年12月23日 12時) (レス) @page15 id: bb7bb5003e (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 更新お疲れ様です! (2022年12月22日 21時) (レス) @page15 id: 75972ecbb8 (このIDを非表示/違反報告)
ライキ - うわぁぁぁぁぁぁん!!!結くんーー!!!!!仲間たちを頼ってくれてありがどうぅぅぅ!!!! (2022年12月7日 18時) (レス) id: c3cdfe919e (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - めっちゃ好きな作品、、、!最高、、、!これからも無理せずに更新頑張って下さい!応援してます! (2022年11月24日 19時) (レス) @page12 id: f9af42ef58 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あんこ | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2022年7月9日 19時

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