困り事6つ目 ページ7
「は、萩原さん!」
「ん?どうかしたー?結ちゃん」
「あの、さっき頭撫でてくれて、呼び方も、えと、嬉しくて、だから、その、あの…研二さん、って呼んでもいい、ですか?」
萩原の脳裏にピシャーーン!と雷が落ちた。
緊張で潤んだ瞳はキラキラと自分を期待に満ち満ちて見詰めているし、何より萩原はずっと弟が欲しかった。自分を慕い頼ってくれる、可愛い弟が欲しかった。
結は、素直で犬のように人懐こいかと思えば猫のようにするりと逃げる掴みにくい人物ではあるが、「諸伏さん諸伏さん!」と相手に駆け寄る様は大層愛らしく羨ましく、「もう無理食べられないです!!」とわんわん泣く様は庇護欲を唆り且つ揶揄ってやりたくなる、なんと言うか、そう、結は奇跡的なまでに理想の弟の姿を持っているのである。
記憶が流れた。結を実の弟として迎えた幼い頃からの記憶が。俺はずっと弟が欲しかった。俺の弟は結だったんだ。萩原は涙した。
「結…俺がお兄ちゃんだよ…研二くんでもお兄ちゃんでも好きに呼んでね…」
「いつにも増してキモいなお前」
名前で呼んでも良いかと尋ねてきただけの教場最年少の少年を号泣しながらヨシヨシする親友に松田もドン引きである。
結はと言うと、ぱぁっと顔を輝かせ、頭を叩くでも殴るでもなくヨシヨシしてくれる萩原に優しい!信頼できる人だ!と好感度を天元突破させており「はいっ!研二くん!」と満面の笑みで100点満点のとっても良いお返事をしていた。
研二くん()は死んだ。
「えっズルい!!!オレに一番最初に声掛けてくれたのに!」
これまた立派な兄を持ち、可愛い弟が欲しいなと思っている諸伏が立ち上がる。
そんな諸伏に降谷はどこ吹く風とばかりに明日の予習を始めていた。が、ふざけんなよ零テメェも道連れだ。松田は教材を取り上げた。
「ねぇ結くん、オレの事もお兄ちゃんだと思ってさ、渾名とか付けてくれると嬉しいな」
「おにいちゃん…?」
呼び慣れないのかどこか舌っ足らずにそう言う結に、諸伏の頭にも記憶が流れた。引き取られた親戚の家で兄と慕い頼ってくれる可愛い弟結くんの記憶が。諸伏は結を抱き締めた。
「オレが守ってやるからね結…!」
「えと、じゃあ、景くんで…」
恐る恐る告げられた渾名に諸伏は涙し守ると誓った。
弟担過激派爆誕の瞬間である。
「景の様子がおかしい」
「さっきからそうだったろォがこのクソポンコツ総代!(クソデカ大声)」
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侑(プロフ) - ついに親友公開と爆処組に真実を、!!高木ほんと優しい…萩と松田も…更新楽しみにしてます!! (2022年6月6日 5時) (レス) @page45 id: 8afc6fd8a6 (このIDを非表示/違反報告)
凛 - とても面白いです。更新頑張ってください❗ (2022年5月6日 18時) (レス) @page33 id: b70e4d72d6 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - またの更新楽しみにしています! (2022年5月2日 19時) (レス) @page33 id: 75972ecbb8 (このIDを非表示/違反報告)
れぃと(プロフ) - おっ…!?ついに、ついにか……!? (2021年7月5日 22時) (レス) id: 40283c6b11 (このIDを非表示/違反報告)
深夜 - 夢主くんは幸せにして欲しい… (2021年7月4日 23時) (レス) id: b4c500a793 (このIDを非表示/違反報告)
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