伍ノ咄 ページ5
何だかんだで放課後。
未だ教室から出ようとしない僕を不思議に思ったのか声を掛けてきた谷崎さん。
因みに僕は帰らないのではなく帰れないのだ。
「今日は両親の結婚記念日で、毎年この日は両親は二人で過ごして、僕は叔父の家に行くンです」
…まぁ、叔父はマフィア傘下の会社の社長だけど。
叔父は悪い人では無い。部下の失態でならざるを得なくなっただけ。
「あら、では少し探偵社にお出でになられては?」
「…何故そんなに僕を?」
「私達探偵社はおろか、マフィアへの興味を全く示さなかったのは貴方が初めてでしたの。だから、探偵社の皆様が興味を引かれたのですわ。あの社長でさえも」
………あー、興味持てば良かったんですね。
「そんなの、高校を卒業してしまえば沢山いるでしょうに…」
「今だからこそ良いのです」
聞けば、以前も学生の事務員を募集してみた所、全く役に立たなかったらしい。
「探偵社員が出払っている際に仕事を請け負うのは事務員ですの。故に、」
「マフィアが来るかも知れない社で作業をしろと」
ゾッと背筋に悪寒が走った。
恐怖からでは無くマフィアと関わるかも知れないというのが厭で厭で仕方が無かった。
「いえ、来ませんわ。マフィアは傘下の企業や港を荒らされた時、利益となる依頼が入った時に動きますの」
「……最近の女性は強い」
思わず苦笑が漏れた。
不思議そうに僕を見詰める彼女に微笑みかけ、僕は鞄を持った。
「もう良い時間でしょう。送るので帰りましょうか。探偵社に行くのでしょう?」
「ええ。でも方向は…」
「同じですよ」
「……ではお言葉に甘えますわ」
にこりと笑う谷崎さんを僕は目を細めて見やる。
眩しいなぁと。そう思った。
「じゃあ、行きましょうか」
揃って教室を出る。
僕達を遠目に見る視線もあり、むず痒い。
「あ、怜さん。私少し寄りたい所があるのですが…」
「構いませんよ」
手を取られ走る。
…こうして僕は敵が増えるんだな…。
「……あれは」
すれ違ったとある人を、目で追い掛ける。
相手と視線が交錯する。
僕は彼をじっと見つめた。
「…………………小さい」
ぼそりと呟いて、僕は又彼女の背中に目を向けた。
───────
「…随分と失礼な奴だな……チッ」
黒い帽子を被った男。
小さいものの顔立ちがやけに整っている為、人目を引くことこの上ない。
不意に彼の携帯が鳴る。
受取人の名は『中原中也』
ポートマフィア幹部の中原その人であった。
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蛍(kei)(プロフ) - あんこさん» 深夜テンションの塊だなぁとは思ったけど突っ込まないでおく((( (2017年2月25日 12時) (レス) id: a4aa4c4dc7 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(プロフ) - 蛍(kei)さん» いえー!ありがとー!!夢主君のドレスに突っ込まないでくれてありがとう深夜テンションでこれ殆ど書いたんだ← (2017年2月25日 9時) (レス) id: dcde93e978 (このIDを非表示/違反報告)
蛍(kei)(プロフ) - どもどもー、零御だぜ!やばいナオミちゃん可愛い……(( (2017年2月25日 0時) (レス) id: a4aa4c4dc7 (このIDを非表示/違反報告)
リズ - この作品面白いですね! (2016年11月13日 23時) (レス) id: 9929c522bf (このIDを非表示/違反報告)
蒼月(プロフ) - あんこ様、太宰さんとの絡みを書いて頂き、ありがとうございました!最高に面白かったです!!これからも頑張って下さい! (2016年10月28日 19時) (レス) id: 3767d3feec (このIDを非表示/違反報告)
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