【潰れたパン】 ページ8
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まさか『突飛なこと』の内容が告白だとは、Aは全く予想していなかった。予想外だっただけに、少々オーバーに驚いてしまった。
偏見だが、英智はもっと計画的でロマンチックな告白でもするのかと思っていた。この状況にA自身がロマンを求めるわけではないが。
だから、突然すぎる暴露に頭が追いつかなかった。英智は今までそんな素振りは見せなかったのに。
「えっと。私でよければ、よろしくお願いします……?」
とりあえず手に持っていた菓子パンをテーブルに置き、軽くお辞儀をする。無意識に強く握ってしまったのか、歪に潰れてしまっている。
これでAは今から英智の彼女になる。『英智くんの彼女』と何度も反芻すると、少しくすぐったい気分だった。
さすがにまだ実感が湧かないが、付き合っていくうちに慣れるだろう。高校生になって初めての彼氏だ。大事にしていきたいと思う。
そういえば、英智が先程からどうしてか無言だ。
「どうしたの?」
「どうしたも何も、いいのかい?そんなにあっさり」
「さすがにダメだったら断るよ」
「待って、理解が追いついてなくて。そもそも僕のことは好きなのかい?」
好きかと聞かれたら、まだその段階には達していない。好きになりかけていると言うのが正しそうだ。
英智と対等な感情とは今は言えないかもしれないが、遅かれ早かれ『好き』に達していたと思う。だからAは告白を受けることにした。
「気になってはいたよ。これから恋ってところだったのに、急に告白されちゃうんだもん」
「それは手が早くて申し訳ないね」
「これなら私もすぐ好きになっちゃうと思う。ていうか、今の告白で結構もってかれたかも。好きだよ、英智くん」
実感が湧かないのは英智も同じのようだ。Aの言葉が未だに頭に下りてこないのか、ぽかんとしている。
「今更だけど、恋愛していいのかい?アイドル的に」
「英智くんだってアイドルでしょ。大丈夫だよ」
Aはファンに色恋営業はしていないし、事務所に恋愛を禁止されているわけでもない。現に彼氏がいるメンバーだっている。
堂々とSNSに上げるだとか、インタビューで口にするだとかはできないが、徹底的に隠すほどでもない。
「そういうことなら遠慮はいらないみたいだね。よろしく、Aちゃん」
「平気だとわかった途端の切り替えがすごいなぁ」

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天羽モモ(プロフ) - 面白かったです (10月17日 23時) (レス) id: 8c3e9536fe (このIDを非表示/違反報告)
wx667p9bc7(プロフ) - 続き気になる〜 楽しみ (2024年1月16日 20時) (レス) id: 3c68cd38f5 (このIDを非表示/違反報告)
トド(プロフ) - ゆさん» 大変お待たせいたしました!これから更新進めていきますのでお楽しみに! (2023年10月15日 23時) (レス) id: 6ab8a556b3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆ(プロフ) - とても続きが気になります!余裕がある時に執筆いただけたら嬉しいです՞⸝⸝> ̫ <⸝⸝՞ (2023年10月8日 23時) (レス) @page1 id: 11ae07be49 (このIDを非表示/違反報告)
傘(プロフ) - アテネさん» ありがとうございます!前作が完結したらバリバリ進めていきたいと思います (2023年8月31日 21時) (レス) id: 6ab8a556b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:トド | 作成日時:2023年8月31日 20時