【嵐のあと】 ページ19
_____
その後、英智の目的が果たされたことを日和から電話で聞くまでに、そう長い時間はかからなかった。
[必死に血なまぐさい戦争を勝ち抜いて、ぼくたち『fine』のメンバーはお役御免になったね]
「そっか。教えてくれてありがとう、日和くん」
散々泣き明かしたあの夜を過ぎてからは、どこか心に穴が空いたようで、英智の夢が叶ったことに対してAは何も感情が動かなかった。
ただ、ことの顛末は知りたかった。そのうち復学するであろう学院の情勢には置いていかれたくなくて、日和を頼ったところだった。
[そういえば、英智くんはライブのあとにひどく体調を崩して、集中治療室行きになったみたいだね]
Aが別れを告げる直前から、英智は体調が芳しくないようだった。渉とのドリフェスの頃にはもう極限状態だったのだろう。
(英智、無理したんだなぁ………)
Aは「応援するけど無理はしないでね!」と念を押したことを思い出す。あれはまだ英智と仲良くお昼ごはんを食べていた時だ。
「せっかく念願が叶ったのに、心配だね」
[あはは、おもしろいぐらい興味がなさそうだね?英智くんとお別れしたんだってね?]
英智の話題に何と言っていいかわからず、冷たいコメントになってしまったのを容易く見破られた。日和はAと英智が別れたことを知っているようだ。
「私のこと何か言ってた?」
[べつに?フラれちゃったとしか聞いてないね。詳しく聞く暇もなく全部が終わっちゃったから]
「そっか」
それから、軽い雑談の後に日和との通話は終わった。英智が破局についてどう思っているかは、日和の知らせだけではわからなかった。
彼は今頃、病室で何を考えているのだろう。Aほどではなくても、ひとりで心を痛めたりしたのだろうか。
革命直後、満身創痍で倒れてしまった英智。彼はAと別れるつもりはなかったようだし、おそらく絶対に1人にしてはいけないタイミングだった。
誰かが英智に寄り添うべきだった。恋人だったAは、それが1番できる立場にいたのに。
ショックと後悔が絶え間なくやってきて、Aまで潰れてしまいそうだった。

220人がお気に入り

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
天羽モモ(プロフ) - 面白かったです (10月17日 23時) (レス) id: 8c3e9536fe (このIDを非表示/違反報告)
wx667p9bc7(プロフ) - 続き気になる〜 楽しみ (2024年1月16日 20時) (レス) id: 3c68cd38f5 (このIDを非表示/違反報告)
トド(プロフ) - ゆさん» 大変お待たせいたしました!これから更新進めていきますのでお楽しみに! (2023年10月15日 23時) (レス) id: 6ab8a556b3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆ(プロフ) - とても続きが気になります!余裕がある時に執筆いただけたら嬉しいです՞⸝⸝> ̫ <⸝⸝՞ (2023年10月8日 23時) (レス) @page1 id: 11ae07be49 (このIDを非表示/違反報告)
傘(プロフ) - アテネさん» ありがとうございます!前作が完結したらバリバリ進めていきたいと思います (2023年8月31日 21時) (レス) id: 6ab8a556b3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:トド | 作成日時:2023年8月31日 20時