【理想郷】 ページ12
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[もしもし?電話して大丈夫だったかな?]
「うん!ちょうど帰ってきたところ」
仕事帰り。家のドアを閉めた瞬間に、英智からの着信がスマホを鳴らした。Aは疲れも忘れて、靴を脱ぎながら耳元にスマホを添える。
Aが夢ノ咲学院を休学してからはや数週間。お互いの多忙を気遣ってか、英智との繋がりは低頻度のメッセージのやりとりのみで、電話で話すのでさえ今日が初めてだった。
鬼のようなスケジュールに追われながらもどこかで電話がかかってくるのを期待していたAは、英智に見られないのをいいことに頬を緩めっぱなしである。
[元気そうだね。仕事は順調かい?]
「忙しいけど、今のところはなんとか。
あ、今日私が出る番組あるよ。新曲やるから見てほしいな」
[ふふ、もう録画してあるよ。会うことはできなくても、テレビで君の姿を見れるのがせめてもの救いかな。]
「そんなこと言われたら、次から収録緊張しちゃうよ」
英智はAが出演する番組のチェックに抜かりがない。もう収録が済んでしまったものを食い入るように見られるのは、少し恥ずかしい。
Aは肩でスマホを固定して手洗いを済ますと、ソファにそのままの格好で飛び込んだ。ダイレクトに耳に伝わる英智の声が心地良いので眠くなりそうだ。
「英智の計画のほうはどうなの?」
[なんとか計画通りに進んでいるよ。いやぁ、凪砂くんも日和くんも扱いが難しくてね。つむぎは僕によくついてきてくれてるけど]
何度聞いても、まとめるのに骨が折れそうなメンツである。Aが休学する前の経験上でも、凪砂の思考は読めなかったし、日和の自由奔放な振る舞いにはよく振り回された。
現に、英智を煽って焚きつけ、とんとん拍子に付き合うことになった原因は日和である。
「聞いてるだけで大変そう……。でも、私も『fine』のライブ見てみたいな」
[何かしらのかたちで配信できたらいいんだけどね。今度、生徒会に上げてみるよ]
生徒会長の零が世界各地を飛び回っているので、実質生徒会の実権は英智にあるようだった。
着々と、夢ノ咲学院に英智の理想郷が築かれようとしている。Aは休学中という蚊帳の外の立場にいながら、

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天羽モモ(プロフ) - 面白かったです (10月17日 23時) (レス) id: 8c3e9536fe (このIDを非表示/違反報告)
wx667p9bc7(プロフ) - 続き気になる〜 楽しみ (2024年1月16日 20時) (レス) id: 3c68cd38f5 (このIDを非表示/違反報告)
トド(プロフ) - ゆさん» 大変お待たせいたしました!これから更新進めていきますのでお楽しみに! (2023年10月15日 23時) (レス) id: 6ab8a556b3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆ(プロフ) - とても続きが気になります!余裕がある時に執筆いただけたら嬉しいです՞⸝⸝> ̫ <⸝⸝՞ (2023年10月8日 23時) (レス) @page1 id: 11ae07be49 (このIDを非表示/違反報告)
傘(プロフ) - アテネさん» ありがとうございます!前作が完結したらバリバリ進めていきたいと思います (2023年8月31日 21時) (レス) id: 6ab8a556b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:トド | 作成日時:2023年8月31日 20時