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「しかし、帝国学園も全国大会に出られるとはな」
「大舞台でもう一度戦えるなんて、今からわくわくするぜ! ……ほい、餃子お待ち!」
しみじみとした風丸の言葉に、夏未の前に餃子を置きながら円堂が答える。そう、惜しくも地区大会決勝で敗れた帝国学園だが、昨年度優勝校のため全国大会に出られるらしい。今回雷門中に負けたとはいえ、強豪校であることに変わりはないので、恐らくは勝ち進んだ先でまた帝国学園と戦うことになるだろう。
「それは、決勝まで勝ち進む宣言と受け取ってよろしいかしら?」
「え?」
「前年度優勝校と同地区の出場校は、トーナメントの組み合わせが別ブロックになるのよ。だから、決勝以外での対戦は有り得ないわ」
「へえ、そうなのか! また帝国と決勝戦か!」
「おいおい、気が早すぎるぜ」
土門のツッコミ通り、全国大会の開会式すらまだだというのにうちの太陽は随分と勇み足だ。そこがまた彼の魅力なのだが。
「夏未さん、何でそんなに詳しいの?」
「大会規約には、隅から隅まで目を通したわ。ルールを知らずに慌てるのはもう懲り懲りだもの」
夏未なりに冬海事件のことを反省したのか、大会についてよく調べている。サッカー部を小馬鹿にしていた頃に比べると、物凄い変化だ。これも円堂のサッカーに惹かれた結果だと思うと、敬愛する太陽の底知れない力を改めて感じるというもの。人の心を変えることは、そう簡単にいくことではないのだから。
「さすが夏未先輩、頼もしいです!」
「事務関係は得意分野よ。これからは音無さんが情報担当、木野さんがフィジカル面担当、Aさんがオペレーターということでよろしくて?」
「は、はい……」
マネージャー陣を取り纏める夏未に秋と春奈が苦笑混じりに頷いた。Aは違和感から首を傾ける。
「夏未、なんかわたしだけマネージャーの分野から外れてない?」
「あなたは第二の監督みたいなものじゃない」
「え〜〜響木監督がいるんだし、わたしはお役御免でも……」
「俺も天宮は監督に向いていると思うぞ。試合全体の流れから、臨機応変に指示できているからな」
「ちょ、監督がそういうこと言ったら流れができちゃうじゃないですか」
響木も夏未の言に乗っかり、慌てるA。何れ選手になるその時まで、なんちゃって監督扱いは変わらないようである。
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作者名:おひめ | 作成日時:2022年9月24日 12時