【inzm】雷門の天使様２ (ページ46)

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｢いよいよ、フットボールフロンティア地区予選一回戦、雷門中学対野生中学の試合が始まります！｣

実況はいつもの如く、将棋部の角間だ。

Aはベンチからメンバー全員の様子を見遣る。試合という場に慣れてきたのか、割と冷静だった。一人を除いて。

｢どうか"イナズマ落とし"をやらなくて済みますように……｣

　壁山である。顔色が悪く、祈るように両手を組んでいる。しかし、彼の願いは申し訳ないが叶わないだろう。尾刈斗中との試合のときもそうだったが、春奈によって集められた選手の噂や情報が間違っていることはなかった。その上今回は戦ったことがあるという土門や豪炎寺が、"ファイアトルネード"でも"ドラゴンクラッシュ"でも"ドラゴントルネード"でも足りないというのだから、きっとそうなのだ。

　そして、試合開始のホイッスルが鳴る。雷門のボールでキックオフだ。それと同時に、まるでどこかの先住民族のような個性溢れる姿をした野生中の監督が雄叫びを上げた。

｢他山先生が、この試合に勝ったらおやつ食べ放題だってさ！みんな、やるコケ！｣

　キャプテン鶏井の言葉に喜ぶ野生中イレブン。今の監督の雄叫びは言葉なのか。そうなのか。
　相手のディフェンスを掻い潜った風丸のパスが、早速FWの染岡に通る。

｢野生中の実力、見せてもらおうか！豪炎寺！｣
｢ゴール前にボールが上がったァ！豪炎寺、"ファイアトルネード"の体勢!｣

　しかし、鶏井が豪炎寺よりも高く跳び、ボールを奪った。

｢！？｣
｢高さなら負けないコケ！｣

　これが、まるで動物のような彼らの身体能力。鶏井がパスを出した先に居た水前寺のドリブルのスピードも桁違いだ。

　"コンドルダイブ"、"ターザンキック"のシュートチェインを、円堂が"熱血パンチ"で辛うじて止める。
　今の野生中イレブンの一連の攻撃で、全体的な身体能力に差がありすぎることが分かった。

　やはり壁山の祈り虚しく、"イナズマ落とし"は必須のようである。"イナズマ落とし"の完成形では、理論上はほぼ倍の高さまで跳べるはずだから、流石の野生中の身体能力でも着いては来れまい。そして、"イナズマ落とし"の完成は壁山にかかっている。果たしてどうなるか。

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