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過酷な特訓の末に、豪炎寺は染岡と風丸が腕を使って組んだ不安定な足場から、オーバーヘッドキックを繰り出せるようになった。
「豪炎寺!」
喜ぶ染岡と、微笑む風丸。染岡といえば、つい先日まで豪炎寺をライバル視して突っかかっていたというのに、まるで自分の事のように喜んでいる。すっかり良い仲間だ。笑顔を見せた豪炎寺は、気が抜けたのかその場で崩れ落ちてしまった。慌てて駆け寄った二人に支えられる彼を見て溜息をつき、用意していたアイシングバッグを染岡の赤く腫れた腕に当てる。
「いっって!」
「無茶するからだよ、おばかさん。三人とも手当するからそこのベンチに座って」
「悪いな、ありがとう天宮」
「気にしないで〜」
痛みに悶える染岡を無視し、礼を紡ぐ風丸には簡潔に答えて、三人をその辺のベンチに座らせた。いつもは円堂のタイヤ特訓を眺めているベンチである。
とりあえず染岡と風丸にはアイシングバッグで腕を冷やしてもらい、肝心の傷だらけの豪炎寺の方に歩み寄った。
「A……」
「無茶しすぎ」
「すまない」
擦り傷ひとつひとつに消毒液を吹きかけながら、小言を言う。
「本当はデコピン百発くらいお見舞いしたいところだけど、怪我人だから我慢してるんだよ」
「ああ」
「反省してるの?」
「ああ」
「でも、ちゃんとやり遂げるあたりはさすがだね。褒めて遣わす」
「有り難き幸せ」
偉そうに言うとノってきたので、疲れはあるものの深刻なものでは無さそうだ。テンションはかなり低いようだが。
「なんでそんなに元気ないの? せっかく出来たのに」
「──……った」
「うん?」
「お前に、かっこ悪いところを見せてしまった」
思わずそんなことかと突っ込んだ。ぼろぼろになっている姿なら、"ファイアトルネード"のとき既に見ている。何とも大したことない理由だ。
「大したことなんだ、俺にとっては」
「この傷は"大したことない"のに?」
「ああ」
あまりに真剣な表情に、思わず頬の筋肉がゆるゆるになってしまう。
「修也はいつもかっこいいよ」
「……ぼろぼろでも?」
「ぼろぼろでも」
「そうか」
どこか満足げな豪炎寺と、にこにこ笑ってご機嫌なA。至近距離で見つめ合って、二人だけの世界に入ってしまった。
取り残された染岡と風丸は彼らに半眼と苦笑をそれぞれ向ける。
「俺たちの目の前で何の躊躇いもなくイチャイチャすんじゃねえよ」
「まあ、いいんじゃないか?」
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おひめ(プロフ) - マナさん» こんばんは。ご質問どうぞ( ⑅ᴗ͈ ᴗ͈)♡ (2022年8月5日 20時) (レス) id: 955601ba91 (このIDを非表示/違反報告)
マナ - 質問よろしいですか!? (2022年8月5日 18時) (レス) @page21 id: 0955411d0d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おひめ | 作成日時:2022年7月28日 19時