【inzm】雷門の天使様２ (ページ32)

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　放課後。部室に行くと、そこには何故か豪炎寺しかいなかった。

｢あれ、みんなは？｣
｢理事長室だ｣
｢秘伝書のことなら、昼休みに夏未さんに話しておいたんだけど……修也、一応聞くけど円堂たちは｣
｢忍び込むらしいぞ｣

　なんてことだ。豪炎寺の返答に頭を抱える。雷門中の生徒だから建造物侵入にはならないだろうが、金庫に触れたらさすがに駄目だろう。

｢円堂は、いつも突拍子もないことを仕出かすね〜｣
｢まったくだ｣

　わざとらしく二人でため息をついてみるが、どちらかというと内心では楽しんでいた。円堂たちはいつだって、豪炎寺とAの想像を軽く飛び越えてゆく。二人だけでは成し得なかったことでも、今の仲間たちとなら遂げられる……そんな気がするのだ、彼らを見ていると。

｢昔二人でボールを蹴っていたのも楽しかったけど、仲間がたくさん増えた今もすごく楽しいよ｣
｢……俺もそう思う。だが｣

　豪炎寺は籠に入っていたボールを軽く蹴り、Aに小さなパスを出した。

｢あの頃みたいに二人でするサッカーも、俺は忘れたくない｣
｢わたしたちの原点、だね｣
｢ああ。だから、早く体調を治してくれ。俺のサッカーは、お前がいないと完成しないんだ｣
｢……うん｣

　Aの前を走り続ける10番(エースナンバー)。見ている景色はもう随分と違うけれど、原点のサッカーを忘れずにいてくれることが嬉しくて堪らない。また彼と同じユニフォームを着て、同じボールを追いかけて、思いきり楽しんで、笑い合って。そうやって同じ景色を見られる日が必ず来る。
　控えめにリフティングをしつつ、今度はAが豪炎寺にパスを出した。

｢完成しなかった連携必殺技も出来たらいいなぁ｣
｢出来るさ、俺たちなら｣

　そう、二人はこれからもずっと一緒だ。時間ならばいくらでもある。部屋の中でも太陽の下でも、夢中になってボールを蹴っていたあの頃のように、必殺技のために朝から晩までサッカーをするのも悪くないだろう。何せ二人はサッカーが好きで好きで堪らなくて、普段は思慮深いというのに、サッカーのことになるとすぐに無茶をする、似たもの同士の幼なじみなのだから。

｢最近、未来を想像するのが楽しくて仕方ないよ｣
｢俺も今、その気持ちがわかった｣

　理事長室に忍び込んだ円堂たちが秘伝書を携えて戻ってくるまで、二人してサッカー談義に花を咲かせた。

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