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「よし、やってやろうじゃないか! 俺のサッカー、俺のシュート!」
風丸たちがランニングを終える頃には、円堂と染岡の語らいも済んだようだった。気合いの入った染岡の声に安堵する。やはり円堂は圧倒的な光だ。Aには決してなれない、眩すぎる光。
だからこそ、円堂の乗り越える力を信じている。たとえ自分にはできないことでも、彼なら……彼の率いるチームなら可能にしてくれるから。雷門サッカー部は、Aにとって夢を見せてくれる居場所だった。
「青春だね〜」
「A先輩って、なんだかサッカー部のお母さんみたいですよね」
「そう?」
「はい、みんなを導いたりするのは監督っぽいですけど……見守っているときの表情はお母さんだなって思うんです。もしかして聖母ですか?」
「残念、人間でーす」
「Aはサッカー部のことになると割とすぐ無茶をするし……確かに子どものために身体を張るお母さんみたいね」
「うーん……わたしはできると思ったことしかしてないんだけどなぁ」
不可能だとわかることをするつもりは端からない。不可能ではないからこそ、無茶のし甲斐もあるというものだ。前世の記憶が枷になっているのか、元々の性質なのかは定かではないが、到底無理なことをやり遂げようとする程の気概を、Aは持っていなかった。
マネージャー二人とお喋りをしながら、半分に人数を割って実戦形式の練習をする部員たちを見守る。彼らは、やる気がまったくなかった時期があったとは思えないくらい生き生きとしていた。少林からボールを受け取った染岡が、円堂のいるゴールに向けてシュートを放つ。先程のような必殺技の兆候を僅かに纏ったシュートだったが、そのパワーは円堂の元に届く頃には掻き消された。
悔しげな染岡の表情を見ていると、ふと覚えのありすぎる気配を感じる。秋と春奈に悟られぬようにそっと視線を向けると、豪炎寺がじっとサッカー部の練習を眺めていた。
心を動かされかけている。夕香が事故に遭ってから一年もの間、サッカーどころか日常生活にまで支障をきたしていたあの豪炎寺が、だ。間近でその姿を見ていたからこそ、今の状況が如何に稀有なものか分かる。
きっと彼もAのように、円堂という太陽に惹かれたのだろう。割と似たもの同士な幼なじみだから、ここに来るまでの豪炎寺の心情が手に取るように理解できたのがおかしくて思わず笑みが零れた。
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おひめ(プロフ) - マナさん» こんばんは。ご質問どうぞ( ⑅ᴗ͈ ᴗ͈)♡ (2022年8月5日 20時) (レス) id: 955601ba91 (このIDを非表示/違反報告)
マナ - 質問よろしいですか!? (2022年8月5日 18時) (レス) @page21 id: 0955411d0d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おひめ | 作成日時:2022年7月28日 19時