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次の日。
今日の練習は休みだ。自主練をするという染岡とは河川敷で待ち合わせをして、約束の時間まで豪炎寺と夕香のお見舞いに行くことにした。いつものように繋いだ手を揺らしながら、稲妻総合病院への道を歩く。当然のように車道側を歩く豪炎寺はその顔に見合う性格イケメンである。
「染岡はいいのか?」
「まだ時間あるから、夕香の顔見ておこうかなって」
「きっと夕香も喜ぶよ」
「そうだといいなぁ」
「夕香はお前に懐いているから、誓ってもいい」
穏やかに会話を交わしていると、やがて目的地に辿り着いた。
「未だに病院に一人で来れないんだよね〜」
「何年も前から病気の治療で来ているはずなのに、不思議だ」
「本能が拒絶してるのかも」
「お前は注射が嫌いだったな」
「大嫌いランキング第二位」
「第一位は虫か?」
「正解!」
「第三位は血だろ」
「修也、わたしのこと理解しすぎじゃない?」
「幼なじみだからな」
さすがはオンリーワン幼なじみ。Aのことを理解し尽くしている様子の豪炎寺に感心しながら、やっぱり病院の匂いは好きではないなあとぼんやり考える。大嫌いランキングでわかる通り、Aは注射と血が大嫌いだ。まだ病気が治る前、血液検査の度にその大嫌いな二つと同時に向き合わなければならなかった。あれ程の地獄は他にないだろうと言い切れる。
「因みに、大好きランキングの方はわかる?」
「俺と夕香と家族だろ」
「おー自己肯定感高いね。ぜんぶ正解でーす」
得意げな豪炎寺が楽しそうで、自然と笑みが零れた。因みに、彼の大好きランキングにも自分が入っているのをAは知っている。照れて会話をしなくなるから言わないけれど。
後ろから着いてくるサッカー部の熱血キャプテンの気配には気づくことなく、二人は夕香の病室に入った。
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作者名:おひめ | 作成日時:2022年7月14日 17時