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河川敷で練習をしていたサッカー部だが、染岡の様子がどこかおかしい。ラフプレーを連発して皆の不興を買っている。秋と二人で雰囲気の良くない練習風景を眺めていると、帝国戦を一緒に観戦した新聞部の春奈が駆け寄ってきた。
「木野先輩、天宮先輩!」
「あら、また取材?」
「いいえ、今日は練習の見学です!」
どうやら彼女は、雷門イレブンのファンになったらしい。帝国戦の諦めない彼らの姿がかっこよかったのだとか。彼らの努力や在り方が誰かに認められることは、何とも嬉しいものだ。雷門イレブンについて熱く語る春奈が可愛らしいのもあり、Aはつい笑みを零す。
「ありがとう。春奈みたいに可愛い子からそんな言葉貰えたら、みんなもきっと喜ぶよ」
「くぅっ笑顔が眩しいです天宮先輩! さすがは雷門中で知らぬ者はいない気高さと優しさと誠実の象徴・天使様ですね!」
「なんて?」
早速テンションの高さについていけなくなった。困惑するAを余所に、春奈は雷門イレブンを見遣る。
「でも、今日は何だか息があってませんよね」
「うん、染岡くんがね……たぶん、次の試合決まって焦ってるのかも」
「次の試合? どことやるんですか?」
尾刈斗中だと秋が答えると、春奈の顔色が悪くなった。彼女によると、何やら尾刈斗中には怖い噂があるという。
対戦相手についての情報を聞かせるため、急遽部員を集める。春奈は持っていた手帳を取り出し、尾刈斗中についての噂を共有した。
「えっと……噂っていうのは、尾刈斗中と試合をした選手は三日後に全員高熱を出して倒れるとか」
「高熱を出す?」
「尾刈斗中の中に、風邪でも引いてる奴がいたんじゃないのか?」
「真面目に!」
茶々を入れた円堂たちが秋に叱られる。春奈は続けた。
「尾刈斗中が試合に負けそうになると、すごい風が吹きだして結局中止になっちゃうとか、尾刈斗中のゴールにシュートを打とうとすると、足が動かなくなるとか」
尾刈斗中だけに、まさにオカルトだ。彼らの試合でだけ怪奇現象が起きるとでもいうのか。まさか噂が完全に違うということはないはずだ。火のないところに煙は立たないのだから、きっと怪奇現象と思わせる不可解なことが実際に起きたことがあるのだろう。
しかし、それにしてはフットボールフロンティアで全国大会に行けている試しがないので、何か仕掛けがあるのかもしれない。
どうやら、考えていたことを実行するときが来たようだ。
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作者名:おひめ | 作成日時:2022年7月14日 17時